ページ

2013年7月6日土曜日

見直したヤモリ

今年もヤモリのやっちゃんの季節が来た。
毎晩、風呂の窓ガラスで小さな蛾をハンティングする様子を見るのが楽しみである。
風呂の窓には3匹のヤモリが鎬を削っている。
強いのや弱いの、尻尾を取られているのがいる。
面白いのは強いのが横取りしたりするが、ひらひら舞う蛾が、偶然に弱いヤモリの傍の口元に追い込まれたりして、却って得をしたりする。
ケンカする時は尻尾を激しく振って威嚇して、噛みついたりする。
それを見ていると飽きないので入浴が楽しくなる。

先日クローズアップ現代で、生物模倣技術(Biomimetics)の特集があり、ヤモリテープなるものの紹介があった。
私はヤモリがガラスでも自由に歩き回れるのは吸盤が付いているからだと思っていた。
ところが、ヤモリの指にはナノレベルのマジックテープが付いているらしい。
以前勤めた高校の特別学習で、カーボンナノチューブの講義を生徒といっしょに受けたが、その技術がこれに活かされるらしい。
カーボンナノチューブでマジックテープを作ると何でもひっつけられて離せるらしい。

このことを今勤めている生物の先生に話すと、解説をしてくれた。
要するに、本来物質はプラスマイナスでくっつき合うので、くっついてしまわないようにナノ単位で隙間を掛けるのが肝要らしい。
私はひっつくようにする技術だと思っていたが、ひっついてしまわないようにする技術であることが分かった。
カーボンナノチューブなど何の役に立つのだろうと思っていたが、こういうことに大きな力を発揮することが分かり、基礎研究の重要性を思い知った。

クローズアップ現代では、蜘蛛の巣、鰒の貝殻、蝶のストロー、ハチドリの羽ばたきなど、色々な例を挙げてくれていた。
実は私は高校生の時に一番好きだったのは生物だった。
大学は農学部に行きたかったのだが、父親の反対が強く学費を出して貰えそうに無かったので、物理化学に選択にしたが、興味が持てずに結局高3で文系に変わった。
最近でこそ農学部は人気が高くなったし、生物学も生物模倣技術によって脚光を浴びる様になった。
おそらく、逆境にもめげずに弛まない研究を続けてきた人達の成果だと思う。
先見の明の無かった我々の世代の一員としては、せめてその努力を賞賛したいと思う。

そう考えるとヤモリのやっちゃんを見る目も変わってきた。
人間なら高価なカーボンナノチューブが必要なのに、生まれながらにして身につけている。
おそらく人間が誕生する前から備わっていた物なのだろう。
調べてみると、原生林には存在せず平安時代にやって来た外来種だという。
しかも、県によっては絶滅危惧種にもなっているという。
幼い頃は外風呂や便所の壁にいて気持ち悪い存在だったが、夏場可愛い居候として今は大歓迎である。
ヤモリテープの開発を機会に日本中で大切にしてあげて欲しいと思う。





0 件のコメント:

コメントを投稿