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2018年9月7日金曜日

高齢者ボランティア

一躍、尾畠春夫さん(78)が山口県周防大島町で行方不明の子供を救助したことで有名になり、高齢者がボランティア活動で活躍していることが知れ渡った。
尾畠さんのような災害地のボランティアは注目されて、マスコミにも多く取り上げられている。
その一方で、家内が加わっている町内の高齢者に対する給食ボランティアなどは、あまりよく知られていない。
家内は高齢者ではないが、この給食ボランティアは他の自治体にもあり、高齢者も多く加わっているという。
高齢者に安く昼食を配るボランティア活動なのだが、利用するご老人の方が配達するボランティアの人より若かったりするという。

この高齢者のボランティアに関して、アメリカの高齢者を長く研究してきた佐野(藤田)眞理子が、「高齢者」山下晋司編『公共人類学』2014 東京大学出版会で報告している。
それは、アメリカのシニア・センター,とりわけ,ミール(食事)・プログラムを中心とした公共サービスのことである。
佐野氏は日本の高齢者に対するメディアの「孤独死」や「無縁社会」の報道に対して、アメリカの状況で疑問を投げかけている。

まず、アメリカでは
「一人暮らしの高齢者」は当たり前であり,むしろ,自立・独立の象徴として称賛されるからである.また,一人で暮らしをしているからといって,社会的に孤立しているとは限らない.」
という。

私は、自分自身、家族や親戚、地縁関係が崩れて、孤独に陥る高齢者を自分の将来として不安を抱き続けてきた。
現代の社会のシステムからすれば、それが当然の成り行きのように考えていた。
しかし、アメリカでは「一人暮らしの高齢者」に対するケアを1980年代から既に行っており、対策がなされてきていた。
各地のシニア・センターでは.高齢者が,1日1回は,温かい,栄養バランスの取れた食事ができるように.ミール・プログラムが提供された。
そして、実際の食事を提供するサービス運営には,高齢者のボランティアの協力が果たす役割が大きかった。
高齢者ボランティア自身も自分の能力を発揮できることで、自尊心を持つことができる。
また、センターに来られない人たちは,同じメニューの宅配食が配られる。
近年は宅配利用者が増えてきているようだが、重要なのは高齢者によるボランティア活動である。

日本では格差が広がり、学校給食が大切な食事になっている児童生徒もいる。
これを高齢者にも自治体の給食と言うことになれば、財政は持たないだろう。
高齢者自身がお互いに助け合う気持ちを持って、給食センターを担えるシステムを作れば可能だと思う。
行政は、そのセンターを設置しボランティアの活動を活用するのである。
これには企業や高所得者の寄付も必要となる。
場合によっては農家や漁業関係などの生産者からの協力も得れば良いとも思う。
自分の母親の介護が必要となり、自分自身も遠からずそうなる歳になって改めて考えさせらている。
災害ボランティアは確かに大切だが、こういう目立たないけれど誰にとっても関わりのある高齢者へのボランティアを真剣に考えねばならないと思う。
「孤独死」や「無縁社会」を克服し、高齢者を通した未来への社会進化を果たす一歩のような気がする。


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