この同窓会は、今までに無いインパクトと混乱を私の精神にもたらした。
浦島太郎伝説で、竜宮でもらった玉手箱を開けると、白髪の老人になった話がある。
私たちは、高校卒業してからこの還暦まで、楽園では無いが竜宮にいる時のように時を忘れていたようだ。
まさに、この還暦同窓会では、玉手箱を開けた状態になってしまった。
わずか、4時間ほどの体験だったが、卒業後48年間のエッセンスがそこに詰まっていたので、何回かに分けてそれを振り返りたいと思う。
私は、今回の同窓会出席の大きな目的は、同じ兵庫県の教育に携わる仲間に会いに行くことだった。
しかし、受付ではそんな思惑とは、関係なく高校時代の雰囲気とはかなり違うが、明らかに過去に引き戻された状態。
私は怖じ気づいて、思わず逃げ出したい気分になった。
集まってきた仲間は、やはり元気者揃いであった。
ただ、さすがに還暦と言うことだけあって、私もそうだがかなり老けた者もいる。
また、その一方で昔とあまり変わらない者もいた。
そして、何よりも分からなかったのがH先生だ。
あの同級生は誰だと話し合っていたのだが、先生と紹介されて驚いた。
後期高齢者の先生と、一部の卒業生の風貌がそれほど変わらないのである。
先生もスピーチでそのことを指摘された。
今回の座る席は自由と言うことで、どこに座るかまず迷った。
というのも、元ロックバンド仲間の悪友はまだ来ていなかったからだ。
そこで、手近な席に座ることにした。
ところがその手近な席は、医療関係と法曹界の人間が多く占めていることに後で気がついた。
私の右隣には東大を出て、紆余曲折の人生を歩んで、今は弁護士をしているK君
そして、その右隣も東大を出て弁護士をしているI君
左隣は医者のN君だが、そのまた左は東大を出て裁判官をしているO君だった。
またその左隣が、東大を出て薬メーカーに勤めているT君。
そして、真正面はやはり元バレーボール部の医者のM君だった。
要するに私は東大出や医学部出の席に、迷い込んでしまったようだった。
まず、K君だが、彼とは結構高校時代は、文学に関して関わりを持っていて、自分たちで手書きの文学冊子を作ったこともある。
彼は大学に入ってから、学生運動などにも参加したらしく、長いこと連絡がとれていなかった。
今回は、その頃のことは触れたがらなかったので、聞かなかった。
とにかく、弁護士になったのは最近と言うことで、その書類作りに日々追われているとのことだった。
私は高校当時の彼の印象と、今の風貌がどうしても重ねることができなくて、最後まで同一人物として納得できなかった。
彼は、今回の同窓会で一番みんなに衝撃を与えた人物となった。
弁護士のI君とは今でも年賀状をやりとりする仲で、高校時代に同じクラスになって、赤穂に来てもらって遊んだこともある。
彼は、私の歌う歌を気に入ってくれいて、”Come together”が、また聴きたいと言ってくれた。

因みに、医者のM君は、私たちが高校3年の時に、野外ステージに出演した時に、聴きに来てくれた一人だ。
ただ、彼が「勉強せいよ」と大きなヤジも飛ばして、みんなに爆笑されたのを、今でも憶えている。
今回はその話もしたが、浪人覚悟で「Ichiro(一浪)」というバンド名で出演したことを、I君は知らなかった。
左の写真の左側が、Eaglesの”Hotel California”を歌う当時の私である。
そして、裁判官のO君は、卒業以来の再開であった。
最初、見覚えがあるが思い出せない。
思い切ってたずねてみると、なんと同じ電車で通っていた通学仲間の一人のO君だ。
私は思わず「チュウチョウ!?」と、当時みんなが使っていた彼の音読みの名前叫んでしまった。
毎日のように6年間顔を合わせていたのに、思い出せなかったのだ。
彼は非常に真面目な性格だったが、中学1年のキャンプファイヤーで、グループの中心になって冗談を言って、盛り上げていたことを話した。
もう40年以上経つのに、けっこう昔のことをみんな憶えているのだが、一番良く憶えているのはやはり弁護士のI君だった。
彼は、高1の時に学年で行った信州旅行のことを鮮明に覚えていた。
それは普段殆ど喋らなかった部屋の仲間が、「裸の島」は映画じゃ無いと言った話だった。
その夜は明け方まで、部屋の仲間と話をしていたのを憶えているが、中身までは憶えていなかった。
因みに、映画は神父さんが宗教の授業などを利用して、よく見せてくれていた。
その一つが「裸の島」だが、私にはこの映画はしっかりと脳裏に焼き付いている。
他にも、「旅の重さ」や「椿三十郎」を見せてもらったが、どれもしっかりと憶えている名作だった。
授業で学んだことはあまり憶えていないのに、行事や映画だけはしっかり憶えている。
たとえ授業のことを憶えていても、話題にしてもつまらないことである。
学校とはそんなところかも知れない。
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