エリック・カルメンの『雄々しき翼』 (Boats Against the Current) が、ネックスピーカーからふいに流れてきた。
私はいつも土曜の朝は、前の週のNHKラジオのラジオマンジャックを聞き逃しを散歩しながら聴いている。
目の前の風景は朝の光を浴びた稲穂の景色だが、40年ほど前に車の中で見た北関東地方の夜の道路風景が蘇ってきた。
その時、車のFMラジオから流れていたのは、その次にかかったAll By Myself だった。
私は、伴侶と弟の3人で東京近辺をたまにドライブに出かけていた。
当時院生の私には免許が無かったので、伴侶と二人では電車が普通だったが、時に弟に運転してもらってレンタカーで出かけることも何度かあった。
その伴侶はそれから2年して去って行ったが、この曲が流れると特別なドライブの風景がいつも目に浮かんでくる。
エリック・カルメンとの出会いは、以前にも書いたようにラズベリーズ時代の”Ecstasy”をコピーして、キダタローのラジオ番組コーナーにバンドで出演して歌ったことに始まる。
せっかくキダタロー先生に褒めていただきながら、エリック・カルメンの曲を人前で歌うことはそれ以降無かった。
大学時代に入った軽音楽部では、当時流行のプログレッシブロックを歌わされたが、結局、クラブとしてのやり方とは肌に合わず足を洗ってしまった。
その後はカラオケでたまに歌ったり、ベストアルバムをカセットテープにうつして聴き続けていた。
文化祭や忘年会など人前で歌いたいと思わなかったのは、辛い別れをした伴侶とのなつかしい思い出がリアルに蘇ってきてしまうからだったのかなとも思う。
バンド活動を辞めるまでは、エリック・カルメンのようなミュージシャンになることを夢見ていた。
ソロになってからのエリック・カルメンの歌の多くは甘く切ないメロディーが多く、その上に彼の深みのある柔らかな声が心に伝わってきた。
そのエリック・カルメンが今年74歳の若さで亡くなってしまった。
自分の青春の思い出も同じように消えてしまうような気がした。
ラジオマンジャックが特集してくれたのは、今度彼のアルバムが出るということからだった。
You Tubeで彼の曲はずっと聴いているのだが、聞く曲にも限りがある。
ぜひ、今度はそのアルバムを手に、思い出が消えないようにしておこうと思っている。
邦題の「雄々しき翼」の原題は”Boats Against the Current”だ。
「二人は最後まで流れに逆らっていく進む舟だ」とかつて一緒に夢見たふたりが別々の世界に生きていくことを歌った曲だ。
まさしく、当時の私たちふたりの生き方とかさなる曲だ。
当時駆け落ちした私たちふたりは世間の常識や権威に逆らったdreamerにすぎなかった。
私は力尽きて舟を進めることができず、耐え続けていた彼女も一緒に漕ぐことを諦めて去って行ってしまった。
本当は流れや風に逆らわずに力を合わせて漕いでいけば良かったのだが・・・・
私はその航海を諦めたが、かつての夢見た旅をずっとその後も思い描き続けた。
今でも相変わらず時代という流れに逆らいながら、その後出会った妻と一緒にささやかな夢への旅の舟を漕いでいる。
そして、最後に追い求めるものを見つけ、人生の夕暮れにはきっとロマンスがあると信じ続けている。
エリック・カルメンの歌とともに・・・・
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