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2014年7月4日金曜日

山桃

私がつとめている学校の前の歩道には、山桃が植えてある。
ちょうど今はたくさん実がなって、地面に落ちている。
赤色が黒ずんだのを口に入れると、懐かしい味がする。
山桃は小学生の頃に、友達とよく向山(丸山)に行って木に登ってとって食べた。
その頃は、牧場をしている家の同級生が山の上に住んでいた。
その子の家では、山桃をふるい落として家族で集めると言っていた。
自分たちはせいぜい袋に入れて帰るくらいだが、親は山桃が服を汚すのでいやがっていた。

高い木の上に登って食べていると、時間が過ぎるのを忘れた。
すぐ近くの山中に住んでいたおじいさんに、「キツネが出るぞ」と早く帰るように促されたりもした。
通りがかったアベックも、男性がいい格好をして木に登って彼女にとって見せたりもしていた。
今から考えてみれば、その頃は山の中を歩いてデートするアベックもいたのだ。
山桃はアケビと並んで、元気な野生児のご馳走だった。
学校の前の山桃も、以前は取りに来る人もいたが、今は落ちるに任せている。
鳥も一時は食べに来ていたが、今はあまり見かけない。

街路樹に成り下がって、見向きもされない山桃は今の豊かさを象徴している。
春に生えるこの地方ではコッポンといわれるイタドリもそうだし、野いちごもそうだ。
赤とんぼの歌に出てくる、桑の実も山でなりっぱなしである。
クルミのように健康にいいと宣伝されれば、きっと取りに来る人も出てくるだろう。
でも今は自動販売機の飲料水やコンビニのお菓子には勝てないのである。
自分もとって食べている姿を見られるのは、少し気恥ずかしさを感じてしまう。
あれほど仲間で競って奪い合うようにして食べた山桃なのに・・・

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