事の始まりは生物の先生が有精卵を注文したところ、数が多く来てしまった事による。
業者が気を遣って、おまけしてくれた卵が授業で必要以上に卵から孵ってしまった。
事前に「誰かもらってくれる生徒はいないか?」と頼まれていたので、授業で話したら二人応募してきた。
ところがいざあげると、そのうちの一人がもてあまして返してきた。
とりあえず他の里親を探したが見つからず、そのうちだいぶ大きくなってしまった。
返してきた二匹を私が行きがかり上、育てなくてはならなくなり、もらうことになった。
その二匹のうち、一匹はもらう前に生物室で暑さのためか、死んでしまった。
私は一匹だけ餌の持参付きもらうことになった。
ただ、雄だと鳴き出すので、返す約束をしている。
生物の先生は雄の場合には、解剖に用いるということだった。
今、家の庭でピーピーと鳴いている。
小屋を作るのは面倒なので、使っていないストーブのガードフェンスに入れた。
下の隙間をふさぎ、上はガーデン用のテーブルで屋根にした。
どこに置くか迷ったが、愚犬クロの近くに置くことにした。
たまにやる鳥の骨の匂いと同じ匂いなのか、散歩の折に襲いかからんばかりに近づいていく。
そのたびにお尻を蹴って叱ったので、少しは控えるようになった。
しかし、家内によるとひよこを眺めながら、食べたいよといわんばかりに、クークー鳴いているという。
ひよこも大きくなってしまったら、襲うことは無くなると期待している。
散歩していても、カラス以上の大きさの鳥には近寄らないからである。
考えてみれば昔は、よくひよこを売っていた。
祭りの出店もそうだが、学校の近くで色つきのひよこを売っていた。
大概は死なせてしまうので、死んだら翌日交換するという条件もあった。
安いひよこは殆ど雄で、おそらく大きくした家では鳴く前にお腹の中に入っていたのかもしれない。
うちは親が卵や肉を採るために、家の納屋のようなところで飼っていた。
父親はひよこ用の箱を作って、電球で暖めていた。
しかし、その父親も歳をとると、鶏を潰せなくなってしまっていた。
昔潰した鶏がつつきに来る夢を見るからだという。
(※鶏を殺すことを「つぶす」とか「しめる」と言った)
私はとある職業高校の文化祭で、「ひよこちゃんレース」を企画したことがあった。
競馬ののりで楽しんでくれるかなと思ったからである。
生徒はそこそこ楽しんでいたが、問題なのはその後である。
近くの種畜牧場からもらってきたひよこは全部雄である。
何匹か文化祭の客にもらってもらったが、8匹あまり余ってしまた。
とりあえずは親に預かってもらったが、そのうち鳴きだして苦情が出始めた。
それで私が、父親からやり方を教わって、すべて処分する羽目になってしまった。
それ以来、雄鳥は飼っていない。
雌なら殺さなくて済むけれど、家内が大の鶏嫌いだった。
今回も鶏の足を見るのが嫌だと近寄らない。
昔は、まさしく庭の鳥=ニワトリで、多くの家の庭先で飼っていた。
私の村では今でも飼っている人いて、時々遠くで雄鳥の鳴き声もする。
ただ、こんな村でもそういう鳴き声の苦情を警察に通報した人が近所にいる。
だから雄鳥はうちでは飼えない。
父親の子供の頃は七面鳥や軍鶏、ウサギを飼ったりしていたという。
鶏のひよこもチャボを使って孵卵させたりしたという。
そのすべてが生活のためであった。
今は鶏もペットである。
持って帰った一人の女子生徒はバナナと名付けて、一緒に散歩している。
いっぱい動画や写真を撮って楽しんでいるようだ。
私の知り合いの美術教師も、雄鳥と部屋で暮らしていた。
非常にしつけができていて、たまに学校に連れてきていた。
私はペットにする気は無い。
雌鳥ならそのまま飼って卵はいただくつもりだ。
そして退職後はどこかで場所を確保して、鶏を平飼いで飼ってみたいとも思っている。