前回紹介した飯田哲也氏の『Ei革命―エネルギー知性学への進化と日本の針路』集英社インターナショナル(2026)[飯田2026] は重要な核問題を扱っている。
「第8章 原子力に固執する「病」と「沼」―病理的政策への診断と処方箋」
の締めくくりとして、次のように述べている。
本章で分析したように、日本の原子力政策を支える「偽りの真実」は、単なる個別の政策ミスではない。それは、個人の認知バイアス(ベーコン)、閉鎖的な社会構造(原子力ムラ)、集団の病理的行動(グループシンク)が、イデオロギーを燃料として強固に結びついた、自己永続的な病理的文化の産物である。このシステムは、客観的現実に対応するのではなく、自らの内部論理に従って完璧に機能している。福島第一原発事故を巡る数々のフィクションは、このシステムの構造が生み出した必然の産物である。この「病」の構造を直視しない限り、日本は原子力という「沼」から抜け出すことはできないだろう[飯田2026:160pー161p]
広島・長崎での原子爆弾による大虐殺や福島原発事故における未曾有の災害を経験しながらなぜ原子力を維持することに固執するのかを説明してくれている。
ここでこれから主力となるAIに必要なコンピューターでの膨大な電力を原子力発電なしで賄うことが肝心となるがそれに関して次のように述べる。
AI革命を牽引するビジョナリーたちの視線は、地上の古い核技術ではなく、空にある「究極の核融合炉」、すなわち太陽に向いている。イーロン・マスクは「太陽系の質量の99・8%は太陽であり、それは巨大な核融合炉だ。なぜわざわざ地上に小さな核融合炉151pを作ろうとするのか」と語り、物理学的にも経済的にも太陽エネルギー利用が圧倒的に合理的だとするロジックを展開(中略)・さらに彼の構想は、地上での発電にとどまらない。自身が率いるスペースXの次世代ロケット「スターシップ」を活用し、数年以内に100GW(原発100基分相当)を超える規模の「太陽光AIデータセンター衛星」を軌道上に打ち上げる計画さえ視野に入れている。これは、宇宙空間で発電した電気をマイクロ波で地上に送るかつての「宇宙太陽光発電(SSPS)」構想とは一線を画す。発電した電気はそのまま宇宙空間でのAI演算に使い、地上にはその計算結果である「データ」だけを送るのだ。グーグルもまた、太陽光で駆動するデータセンター衛星を軌道上に配備する構想を持っており、24時間365日発電可能な宇宙で知性を生み出し、地上へは情報だけを降ろすという未来を見据えている。これこそが、送電網の制約を受けない究極の解決策だというわけだ[飯田2026:150pー151p]
つまり、宇宙空間ならずっと「究極の核融合炉」の太陽を活用でき、そこでAIデーターセンターを運用すれば地上に核施設は必要ないと言うことだ。
ただ、気をつけねばならないのは宇宙太陽光発電(SSPS)は軍事目的でも使えることだろう。
それでも、化石燃料の支配を巡る戦争や紛争を防ぐことができるし、原子力発電所は必要でなくなる。
これから問題となるのは原子力にしろ核融合にしろ、軍事目的以外では必要でなくなる「死の科学技術」となるということだ。
火薬は花火にもなるし、ダイナマイトは建築現場でも活用できる。
核技術は鉄腕アトムやドラえもんを実現できない限り、平和利用などできそうにない。
逆に言えば夢のアニメロボットが核技術の脅威を隠蔽していたのだ。
ロシアのウクライナ侵攻で核兵器は戦争抑止にはならないことが明確となった。
戦争の原因である化石燃料問題が解決できれば、あとは食糧と水問題での戦争を回避することが重要となるだろう。
発展途上国の燃料に関しては、過放牧や過伐採での砂漠化が問題となっており、ポータブルの太陽光発電蓄電池を援助できれば改善できる。
また、再生可能エネルギーを用いた海水の淡水化で水問題も改善できるだろう。
戦争自体がなくなれば、核兵器そのものも必要が無くなる。
核兵器所有による巨大な軍事力を背景に基軸通貨のドルによって世界を牛耳っていたアメリカにとっては不都合なことになるだろう。
日本がアメリカに追随するのは、アメリカの力によって既得権益を得ていた勢力が日本を支配していたからだろう。
その勢力も原子力は必要でないものだとすると、今までの政策の誤りを認めざるを得なくなる。
そして、何よりも原子力の平和利用という隠蔽ができなくなり、広島・長崎の原爆使用は毒ガス兵器使用と同じ意味となってしまう。
これはアメリカ政府も日本政府も避けたいことだろう。
これが日本政府が原子力を維持することに固執する真意のような気がする。