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2026年10月5日月曜日

人新世のエコロジー戦争とアメリカ

 人新世は地質学用語でありながら、正式な地質時代とは認められていない。

ただ、広く用いられているのは、産業革命以降ということだろう。

 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]は次のように述べている*1

南極北極の氷山の分析から、科学者たちはこの時期に大気中の二酸化炭素量が異常に低いレベルにあったことを測定することができた。(中略)それはアメリカ先住民に対しヨーロッパ植民地勢力が行なったジェノサイドの大きさを客観的に数値化しているからである。大陸現地人の人口が五五〇〇万人から六〇〇万人に低下し、地球人口の五分の一が消滅した。世界史で最大の人口学的破局はそれに引き続いて大陸の再森林化を引き起こし、二酸化炭素の貯蔵量を増大させることになり、気象学者はその炭素量値を最低値に設定して、それを基準に恒常的な上昇を計測することができるほどの規模だった。この仮説によれば、人新世は一四九二年、アメリカの先住民にとっての世界の終わりであるこの年から始まることになる。人新世は殺新世である[前掲書:369]。


現在は二酸化炭素の数値が高まることと人新世を関連させているが、人間の生活が地球に影響を大きく及ぼしたと言うことでは、逆に数値を低めたことも人新世と言える。

ネットのAIで調べれば、15世紀末から16世紀にアメリカ大陸全体の人口の約90%が激減したが、歴史学者はそれを「大いなる死(The Great Dying)」と読んでいるそうだ。

人口減少の主な原因は①疫病の蔓延②征服戦争と虐殺③強制労働と社会崩壊となっているが、①の原因が一番関わっていたと広く言われている。

疫病はヨーロッパ人が持ち込んだもので、ある意味では生物兵器ともとれ、②を含めてジェノサイド と捉えて良いだろう。

そして、二番目の人新世への転機は広く言われている産業革命だが、むしろÉ,アリエズ&M,ラッツァラートは原爆投下を重要視して次のように述べている。


さらにほかにも―最大多数が―人新世を一九四五年に始まるものとしている。その理由は、放射能というシグナルであり、それが物語っていることも明瞭だからだ。マンハッタン計画という名のもとに日本に投下された二発の原爆、そしてその直後から続く多数の核実験は、最初期の「爆発的加速」の沈殿物として固定される。しかし、栄光の三〇年、西ヨーロッパの石油化と「原子力の平和利用」の前景化を推進する前に、二度の総力戦の生産的・破壊的加速があった。人新世は軍民共用の死新世なのである[前掲書:370]。


人新世を殺新世とか死新世と見なすにしろ、アメリカが大きく関わっていることが分かる。

ヨーロッパ人がアメリカ大陸を植民地にするのに一番の有効だった武器は、軍事革命によってヨーロッパが優位となった大砲と火縄銃だった。

結果的には人感染という生物兵器で滅ぼすことになったのだが、それを可能にしたのは軍事力であった。

そして、核兵器こそ最大の軍事革命と言われており、アメリカは軍事革命によって人新世の到来をもたらしたとも言える。

アメリカは産軍学複合体で世界の覇者となり、これからのITやAIを用いた軍事力でも最強の地位を維持している。

しかし、経済分野では金融戦争には勝利しながらも、工業戦争、貿易戦争では敗戦を余儀なくされ、軍事力で脅しながら威信を保とうとしている。

金融戦争に関してはイスラーム経済が脅威となり、工業・貿易戦争では中国が脅威となっている。

そして、人新世の一番の重要な戦争はエコロジー戦争だが、これは互いに攻撃し合い、それに対して内向きに防衛しなくてはならない。


アメリカは自然災害に関しても兵力を持って対処し、災害を利用しながら社会を改変しようともしているようだ。

しかし、イランに仕掛けた流血戦争でエネルギー問題が深刻化し、推し進めている生成AI推進事業では水不足が深刻化しているという。

日本も千葉の水害はエコロジー戦争の敗北であり、昨年から続く米問題でも敗北続きとなっている。

中国も水力発電において大きなリスクを抱えていることが表面化して、決してエコロジー戦争を有利に戦っているわけではない。

皮肉なもので一番エコロジー戦争で苦しんでいたはずの北朝鮮が、ロシアの流血戦争でGDPを成長させて豊かになっている。

本格的なエコロジー戦争は始まったばかりなので、アメリカがいつまで強気の姿勢を維持できるか分からないと思う。

熱波での災害に窮したヨーロッパはこのエコロジー戦争を深刻に受け止めているのに、日米ではそうではないのが致命的のように感じてしまう。

結果的に人新世は死新世となってしまうのかもしれない。


*1 É,アリエズ&M,ラッツァラート 杉村昌昭、信友建志訳 2019  『戦争と資本―統合された世界資本主義とグローバルな内戦』 作品社 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]


2026年10月1日木曜日

東京は雨降り

 私の大好きな曲に桑田佳祐の「東京」という2002年に発売された曲がある。

桑田の曲の中では珍しく、重くて演歌のような情感を表現してあって、私自身気分が落ち込んだときにひとりで歌ったりしている。

ただ、最近はニュースで東京の雨が続くと聞くたびに「東京は雨降り」という歌詞だけを軽く口ずさんでいる。

私は大学院時代に東京に住んだ経験があるが、雨に降られて困ったことは記憶にない。

どちらかというと、冬に雪が積もって困った経験をよく憶えている。

雨はどちらかというと、大学時代に暮らしていた名古屋での思い出の方が多い。

大学時代は付き合っていた恋人とのデートが絡んでいたので、憶えているのだと思う。

そういえば大学生当時流行っていた雅夢の曲の「愛はかげろう」の出だしは、「窓ガラス 流れ落ちていく雨を 細い指先でなぞってみる」であった。

このユニットは名古屋の大学生だったので身近に感じて、それと思いを重ねたりしたが、その時の恋人と別れたのは東京であった。

そして、雨の中で彼女を思い出していたのは、地元に戻ってからである。


桑田佳祐の「東京」に出会うまでは、雨の日には三好英史の「雨」や、カーペンターズの「雨の日と月曜は」をうろ憶えで口ずさんでいた。

雨はどうしても気持ちが落ち込み、別れた人への未練が湧き出てきたりする。

そんな雨の日でも温水プールへ行くと、大きな窓に激しく降っている雨を眺めたり、天井に窓があるプールでは雨粒を眺めながらゆったりと泳げる。

落ち込んだ気分と水の中の気分が合わさり、しかも単純な泳ぎの中で、昔の切ない記憶が甦ったりする。

「東京」の歌詞にある「そして悔やむのは 涙の河に捨てた恋」は、私にとっては横浜の恩田川にだった。

その情景はゴーグルにしみ込んできた水を涙と思いながら、泳ぎのストリームに身を任せた我が身に重ねている。


今年の東京はあまりにも雨が続きすぎたので、そういう感傷に浸っていては何も出来なかっただろう。

千葉県などの災害を見ていると、関東で警戒すべきは地震だけではないと思える。

東京の食糧を賄う大切な場所が被害に遭って、これから都民は食糧不足とそれに伴う物価高が、どんどん続いている物価高騰に追い打ちをかけるだろう。

こんな痛みを抱えながらも、東京の人口は増え続けている。

「都会の隅で 世の痛みに耐えて 咲き続けている」ひまわりのような人が多いのだろう。

私はようやく雨が上がって天気が続いたので、家の裏の畑のサツマイモを一筋掘り上げた。

このところのしっかりと降った雨のお陰で、大きく立派に育ってくれていた。

そんなサツマイモを手に取ると、虚しさなどは感じるはずもなく、蒸し上がった芋が口の中でとろけるのを思い浮かべてとても愉快だ。




2026年9月30日水曜日

老僕は死なず、ただ増えゆくのみ

 我々の世代は交通戦争を生き抜き、受験戦争にも生き延びてきた。

「戦争を知らない子ども」は、当時のベトナム戦争の反戦歌として歌われたが、この歌が流行した1970年は交通事故死15,801人、負傷者981,096人という交通戦争の戦時下にあった。

また、1972年にリリースされた井上陽水の「傘がない」で若者の自殺が歌われているが、その年の自殺者の総数は18,015人である。

ちなみに1970年の殺人による死者数は3,378人である。

2023年当時のパレスティナのガザ地区の戦争による死者が2万人だという。

人口あたりとしては、確かに日本の当時の死者数の方が割合として少ない。

しかし、殺戮兵器が用いられず、しかも平和と感じて生活していた人が、これだけ無残な死に方をしていたのだ。

当時から現在にかけて、資本主義社会における流血戦争とは違う、住民のなかで起こる戦争を戦争としての認識はしてこなかった。

海外で起こる流血戦争をテレビや映画を見ながら、日本は平和であり、戦争はしてはいけないと誰もが言ってきた。

しかし、身近に起こっている住民の中の戦争を止めようとしなかった。

それは自分は加害者になる可能性もあったが、社会に取り残されずに成功者になって勝ち組として生き残ることに励んだ。


こういう戦時下にあって、生き延びた世代として65歳以上の人口が3割に達しようとしている。

退職して老後は子や孫とのんびり暮らして行きたいと思っていたが、その子や孫はそばには既にいなかった。

そのかわり自分の親は施設に預けることができるようになっていた。

今日の特売の火曜市では限定200個のふだんより100円安い卵を求めて老夫婦が殺到した。

雨が降ってコインランドリーがいっぱいとなって、おじいさんは順番待ちに置いてかれた。

来月から第三のビールが値上げだし、電気料金も上がるという。

年老いても、まだ生き残りのための住民としての闘いは続いている。

実際の太平洋戦争での流血戦争を経験した人の話はマスコミで取り上げて感動を呼ぶのだが、住民のなかの戦争を生き抜いた話は話題にもならない。

ただ、武井壮のNHKのファミリーヒストリーは、父親が金と女に狂って崩壊させられた家庭を生き抜いた戦士の感動をよぶ実話が放映された。

金の卵として集団就職という名の徴兵によって戦って成功しながら破滅した父親の物語でもあった。

世間の豊かさをよそに、懸命に生き抜いてきた武井壮の姿で生きていく力をもらった。


現代は交通事故死は減ったが、中高生が受験戦争などでの自殺者が増えているようだ。

社会に出て戦う前に、受験戦争や家庭問題、人間関係に苦しんで自ら命を絶っている若者が増えているらしい。

武井壮氏の生き様を中高生には知ってもらいたいと思うが、彼のように立派な戦士になる必要は無く、どんなに惨めでも生き抜いた姿だけ学んでほしい。

そして、自分たちは決して平和で豊かなな時代に生きているのではなく、生きるのに厳しい戦時下にあることに気づいてほしい。

これが資本主義の宿命と言ってしまえばおしまいなのだが、生き延びた我々老僕が若い人に残せるのはそういう教訓だけかもしれない。


参考文献

É,アリエズ&M,ラッツァラート 杉村昌昭、信友建志訳 2019  『戦争と資本―統合された世界資本主義とグローバルな内戦』 作品社 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]







2026年9月29日火曜日

イスラーム理解・その3~金融戦争に対抗する無利子銀行

 このところ、日本国債の金利の問題が毎日のようにニュースとなって流されている。

これは為替レートでの円の価格にも大きく影響するし、個人としては住宅のローン金利にも関わってくる重大な関心事だ。

これまでは低金利どころか、マイナス金利と言うことで、多くの日本国民は利子を当てにして暮らすことはなかったし、住宅ローンの負担も比較的少なくて済んだ。

しかし、円安となってしまい、外国からの輸入が増えている日本では物価やガソリン、電気代などが上がって生活を圧迫している。

要するに、金利をめぐる国際的な攻防、いわゆる金融戦争の戦時下にある我々の社会は、つねにそのリスクを負って生活している。

そして、政府はNISAを通して株への投資を呼びかけていて、NHKなどのマスメディアでも子供のこういう金融への教育を大きく取り上げている。


私たちの世代は額に汗して物を作ったり、人にサービスしてお金を稼ぐことが一番尊いことだと教えられてきた。

しかし、今は小学生にも金を活用して儲けることを学ばせる。

NHKテレビでは円安だから、外国で稼いでその金を元手に日本で楽に仕事するというような映像が流れた。

一方Youtubeではオーストラリアの現地の人が、物価や時給が上がりすぎて、発展途上国の低賃金労働者の影響で社会が混乱していることを述べていた。

その発展途上国では多くの借金をして出稼ぎに来ているのが特徴となっている。

この配信者は日本も同じようになることを危惧して動画を流してくれたのだった。

現実的に日本にやってくる発展途上国の労働者の殆どが負債を抱えていて、その返済のために場合によって犯罪を犯したりしている。

これこそ、為替レートの違いを利用した国際的な金融戦争の実態であり、そういう金融の抱えている裏の面をマスコミは報道しないのは国民を欺いている。


こういう資本主義国の金融戦争の一方で、独自の経済を築いているのがイスラーム経済である。

その事に関して分かり安く解説してくれているのが、

長岡慎介*1の「未来をひらくイスラーム経済のつなぐ力―その思想と歴史から学ぶ」黒木英充・後藤絵美編 2023 『イスラーム信頼学へのいざない』  東京大学出版会


であり目次は以下のようになっている

はじめに  99 1 金儲けを肯定する経済思想  99 2 商売に埋め込まれたイスラーム経済のしくみ 102 3 イスラーム経済の「つなぐ力」 105 4 現代世界に復活したイスラーム経済 108 5 イスラーム経済とポスト資本主義 111


イスラーム経済は決して金儲けを否定しているわけではなくて、その事業に加わることなく、金を投資してその利子だけを得ることを禁じている。

この書にはそのイスラームの商売や銀行を分かり易く図解して説明してくれているので是非読んで欲しい。

そして、彼が一番訴えているポスト資本主義として次のように述べている

一見すると、このしくみは、これまでのクラウドファンディングと同じように見えます。しかし、商売目的のものと社会貢献目的のものを明確に区別するこれまでのクラウドファンディングと異なり、イスラーム型クラウドファンディングでは、人助けのアイデアのなかに必ず商売が入っているのです。それは、ワクフでは、商売からの儲けを使って困っている人たちのための施設を運営することになっているからです。そうした商売と人助けを融合するワクフの精神が、このイスラーム型クラウドファンディングにも息づいているのです。[前掲書:112]


小学生に金儲けだけ教えて、人助けを教えない学校は、下の下である。

NISAなどは銀行に頼るだけで、自分が投資しようとする企業の実態すら分からない。

企業の業績に関わらず、株価が上下することだけで利益が得られる今の金融戦争に生き残れる人材を、文科省は育成しようとしているというのだろうか?



*1 もっと詳しく解説してくれているのが長岡慎介  2024 『イスラームからお金を考える』   筑摩書房である




2026年9月27日日曜日

アメリカへの食糧依存と日本消費者の無抵抗

 農業経済学者の鈴木宣弘氏は日本の食糧問題をアメリカへの従属として危機意識を高めようという訴えを続けている*1

そもそも、日本は戦後まもなくアメリカからの食糧援助からその依存が始まった。

昭和21年から始まったGHQ(連合国軍総司令部)による米や小麦粉の放出、およびアメリカからの緊急輸入

ララ物資(LARA)は1946年に結成されたアジア救済日本委員会を通じ、アメリカ住民の善意や海外移住者(日系人)からの救援物資(小麦粉、脱脂粉乳など)

学校給食の再開は1947(昭和22)年から、アメリカの援助やララ物資による脱脂粉乳や小麦粉を活用し、全国の小学校で学校給食が部分的に再開・拡充された。

これは、「隠れた戦争経済としての食糧援助。それは貧困国が輸入食糧に依存するよう仕向ける [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]:350」として現在もNGOでも行われている。

敗戦当時の日本は現在のアフリカのサヘル地域同様の飢餓状態にあって、アメリカの食糧援助という経済戦争の支配下にも陥ったのだった。

これ以来、日本人は食糧依存が継続し、グローバリゼーションでの食糧戦争でも抵抗を阻まれてきた。

またこの食糧援助は日本人の食生活を変革し、パンを中心とした欧米の食生活が広まっていった。

学校給食ではパンと牛乳が主であったが、やっと米食も取り入れられるようになった時には、パンを中心とした食事も根付いてしまっていた。


工業や金融では世界でも先進性の高い日本は、食糧に関しては第三世界並の貧困国である自覚がないのが悲劇でもある。

アメリカにとっては、日本の食糧の依存を維持さえしておけば、強い抵抗を受けることはない。

政府とJA、米農家はこういう日本国民の無自覚な食糧依存性を逆手にとって、アメリカに米作だけの特権を許してもらって国民を食い物にしてきた。

何度も繰り返すようにJAは圧力団体として自民党の政策を左右し、見返りとして政治献金と米農家の票を差し出してきた。

今回の米騒動も結局、闇の中で備蓄米が買い戻され、JAの思惑通り米価格は維持されようとしている。

これだけ国民を愚弄した政策を続けられても、生死に関わる食糧を依存してしまっている消費者は抵抗するすべを持たない。

以前から訴えているように、米の輸入も自由化する代わりに、補助金をアメリカに認めさせて、アメリカの米価並みの価格にすれば良い。

本当に安い米は東南アジアから経済支援のつもりで輸入して、困窮している日本の消費者がしっかり食べられるようにすべきである。

しばらくは、米農家の倒産、破産が続くかもしれないが、痛みをともなった改革はどの分野でも経験してきたはずだ。

そして、来るべき世界の食糧危機に備えた力強い農業を再建すべきだと思う。


今日(9/27)も、村の稲刈り時季に行う道作り作業を行ってきたが、銀行の利子以上の高い小作料をもらっている水田地主のために背負い草刈り機で汗を流した。

肝心の水田地主は高齢化でまともに道路や川の土手の斜面の草を刈ることも出来ない人が殆どだ。

人によっては、普段使わない高価なマキタの草刈り機のエンジンがかからないので、熊手を持ってきてぶらぶら歩いている始末である。

水田地主の殆どは肩掛けの2サイクルエンジンの草刈り機でガソリンの混合油なので、その混合油の支給はあるが、私のように4サイクルのガソリンに対して支給はない。

そもそも、水田地主は男性は稲作りで、女性が畑作りの感覚が残っているので、畑仕事をまともにしないし、水田も水管理以外には殆どしない人が多い。

そんな水田地帯の情けない状態を放置して良いはずが無いが、村にはJAに勤めている人が自治会を仕切ったりして改革は出来ない。

JA勤めでない村役を務めた人でも、自分の子供をJAに就職させたりするので、村の自治会とJAの関係は切れることはない。

JAは村の中心的な金融機関になっているが、有価証券の運用失敗で赤字に転落した一方で、米価の高騰や農機の取り扱いで大きな利益を上げた。

村は過疎化してJAは組合員や年金振り込み者も減っていずれ破産していくだろう。

要するに米農家を懐柔しながら食い物にして、米作関連の収益で生き残りを図っているだけだ。

現実の農村ではこのままいくと、高齢化が進んで道作りさえまともに出来なくなって、村人が協力する稲作も終わっていくだろう。

既に、小作料をもらうどころか無償、有償で自分の水田を大規模農家に任せなくてはならない水田地主も出てきているようだ。

何度も述べてきたが、日本の水田はアメリカのように大規模化は難しいし、粗放機械化農業は永続的な生産に反する。

専業農家を支援する体制を農村で維持して、食糧と環境を保全する政策を行うべきである。

それは消費者に現状を理解してもらい、協力してもらう必要がある。

今、日本農業を変革しなければ、来るべき食糧危機には多くの犠牲者を出すことにあるだろう。

その時、裕福な官僚と自民党の政治家や支持者はアメリカの食糧をまた援助してもらって生き残れると思っているのだろうか?



*1   鈴木宣弘 2013 『食の戦争―米国の罠に落ちる日本』  文藝春秋、鈴木宣弘 2025『食の属国日本―命を守る農業再生』   三和書籍

引用文献

É,アリエズ&M,ラッツァラート 杉村昌昭、信友建志訳 2019  『戦争と資本―統合された世界資本主義とグローバルな内戦』 作品社 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]

2026年9月26日土曜日

トランプアメリカの核とレアメタル・レアアース開発戦争

 トランプが「石油を掘って掘って掘りまくれ」と温暖化戦争を仕掛けていることは、すでに述べてきた。

その温暖化やイラン攻撃は結果的に利用されて原子力発電という核開発が見直されることとなった。

原発の廃止を目指していたドイツやイタリアも、化石燃料不足で高騰し原発利用を検討し始めたという。

そして何よりもトランプは日本の軽水炉の原発技術を用い、しかも日本からの巨額の投資によって、原発開発をしようとしている。 

この分野ではアメリカ独自で開発ができず、日本を関税で脅しながらうまく利用して、自国負担もなく利益を上げようとしている。

これは新時代の植民地政策のようにさえ思える。

温暖化戦争は核開発戦争を引き起こし、従属国を利用していこうとしているわけだ。


一方で、アメリカは中国に関税による貿易戦争では、レアメタルを人質にされて思うように戦えていない。

そこで、日本の鳥島のレアメタル開発に目をつけたようだ。

日米による開発も高市はトランプと協議したように言われている。

しかし、鳥島近辺での開発は環境への影響が懸念されており、それを無視して進めていくことには大きな問題となるだろう。

中国がこの分野で有利なのは環境破壊を無視しているからで、日本は海洋という広く世界に影響が出ることを無視することは信用を失うことになるだろう。

とにかく、トランプとその子分の高市は環境を人質に貿易戦争を有利に戦おうとしている。


一方中国は高市のアメリカ依存に対して、トランプを懐柔して歯止めをかけようとしている。

おそらく米中首脳会談では台湾問題やレアメタル・レアアース・AI開発問題が話し合われたであろうと思う。

これまでは日本が中国に接近することにアメリカは神経をとがらせてきたが、高市ではその警戒はそれほど必要ない。

トランプにとって中国も日本も上手く利用できれば良いのであって、日中関係が悪い方がアメリカにとっては都合が良いとも言える。

ただ、今度のアメリカの中間選挙で共和党が大敗北すれば、トランプの独裁は終わるだろうし、それは高市の独裁の終わりともなるだろう。

そうなれば、日中関係も変化するだろうし、それこそ大きな地殻変動が起こるだろう。






2026年9月24日木曜日

イスラームの理解その2~中国の挑む国際秩序再編と米中関係

 今回のアメリカ・イスラエルによるイランへのミサイル攻撃で、イランの防空システムの脆弱性が明らかになった。

どうも、ロシア製、中国製、自国製の混在で指揮統制や通信ネットワークの統合が不十分だった可能性が指摘されているようだ。

そんな中で、イランが中国から携行式防空ミサイル発射機を最大400基調達する契約を結び、数週間以内に初回分の引き渡しを受ける見通しが報じられている。

これで低空飛行する戦闘機、ヘリコプター、ドローンへの攻撃が可能で、アメリカとイスラエルはミサイル以外では安易にイラン攻撃が出来なくなりそうだ。

これで、アメリカが手を引けば朝鮮、ベトナムから続く大失態とも受け止められそうだ。


そんな中で、米中首脳会談が行われ、トランプ大統領は習近平国家主席を自ら空港まで出迎えるほどの歓待ぶりに、アメリカの中国への配慮を知ることが出来た。

この米中関係に関しては、Yahooニュースで呉心伯氏の次の見出しで見解を報道している

「5年後にはアメリカ上回る」 習近平氏の外交ブレーンが語る米中首脳会談の狙い 日本には強く警告「米中対立 期待すべきではない」

この記事に関しては多くのコメントが寄せられているが、日本は高市総理の対中政策が正しいのか誤りなのかを考える一つの材料になるだろう。

トランプ大統領は米中首脳会談の前に高市総理と会談する配慮を示したが、その内容は明らかではない。

私はトランプ大統領は日本も中国も上手く利用としているだけで、東アジアでのイニシャティブを軍事力をもって維持しようとする意図は無いと思う。

米中首脳会談では第二次世界大戦では同盟国だったとトランプは述べ、習近平もファシズムにともに戦ったと述べたという。

朝鮮戦争では戦火を交えた関係よりも、中華民国時代の関係を持ち出すことは、両氏とも台湾を含んだ中国という姿勢に思える。

すでに、北朝鮮に対しても米韓の軍事演習を短縮して配慮しており、相手の国が民主的な国かどうとか資本主義かどうかは、もう政策の決定事項ではないようだ。


とにかく、我々は中国がどういう意図をもって外交政策をして、その実力はいかなるものかを知っておかねばならないと思う。

相変わらず北朝鮮からの弾道ミサイル実験で日本では大騒ぎしているが、今起こっている戦争では核を用いない限り、迎撃も可能でそれほどの脅威にはなっていない。

温暖化による災害や交通事故で亡くなっている人の数の方が、弾道ミサイルで亡くなっている人の数よりも多いだろう。

日本人は流血戦争の総力戦を恐れているかもしれないが、それこそ核抑止力によってそれが出来ない状態のようだ。

台湾有事に関しても現在行われている戦争が参考になるので、中国も簡単に事を起こさないように思える。

そもそもアメリカを抱き込んでしまえば、台湾は戦争しなくても手懐けると思っているようにさえみえる。


それよりも、経済戦略による貿易戦争の方が、重大な意味を持ってきている。

その参考になるのが三船恵美「国際秩序再編に挑戦する中国と中東ユーラシア」[三船恵美2025]*1である。

その目次は次のようになる。


はじめに 

1 既存の国際秩序に挑戦する中国  

(1)「新時代の中国の特色ある大国外交」による挑戦  (2)中国の大国外交と中東  

(3)多極化の模索と対中東外交 

2 ユーラシアの連結性と中東  

(1)陸と海から見る中東   (2)「人類運命共同体」構想の手段としての「一帯一路」 

(3)中東に対する「1+2+3」協力枠組み  

3 中東ユーラシアの秩序再編から見る中国との関係  

(1)UAE   (2)サウジアラビア   (3)オマーン  (4)イラン  

おわりに 


この論攷で述べられていることの要点を上げてみると、まずアメリカに対しては次のように述べている


「人類運命共同体」の構築へ向かう中国は、国連、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの多国間レジームを重視する姿勢を打ち出している。そこには、アメリカ一強の国際秩序に抵抗し、多極的な世界の形成を促進する意図がうかがえる[前掲書 52頁]。


そのために行おうとしているのが「大国外交」であり、それに関しては次のように述べている。


中国の大国外交とは、中共による一党独裁体制のもとで、欧米型のデモクラシーとは異なる「中国的民主【(7)】(minzhu)」の政治システムを非欧米諸国とお互いに擁護し合い、途上国としての既得権益を維持し、世界政治に影響力を及ぼす大国として振る舞う外交[前掲書 53頁]


つまり、欧米の民主主義とは一線を画す政治システムを、非欧米諸国と共有してその中心に位置しようとしている。

日本は非欧米諸国なのかどうかが問題となるが、それが微妙な立場だと言うことが分かるが、それは次のような中国の歴史的背景や現状認識と関わっている。


この背景には、「屈辱の歴史」の経験や、冷戦後にアメリカ主導で築かれた国際秩序が中国の核心的利益を侵害している、という中国の強い被害者意識がある(中略)アメリカが経済覇権を築いてきた要因の一つの、ペトロダラー・システムを崩す「脱ドル」を推進するには中東の主要産油国を引き込む必要があるという[前掲書:55頁]


日本は中国に「屈辱の歴史」を与えた国でもあるが、アメリカの経済覇権の恩恵と辛酸をなめてきた国でもある。

「脱ドル」を指向した時もあったが、すぐにアメリカに潰されてしまった。

この「大国外交」こそ日本が戦前に欧米支配に対抗して打ち出した「大東亜共栄圏」の、中東ユーラシア版と言えるのかもしれない。

ただ、日本がアメリカに宣戦布告したような愚を犯そうとはしていない。

三船恵美氏は次のように結んでいる。


中国は従来のアメリカの役割や優位性に取って代わろうとしているのではない。中国が描く中国主導の新たな中東ユーラシアの国際秩序観は、アメリカの優位性を排除したり弱体化させたりしようとするものである。しかし、中東ユーラシアの国際秩序が大きく揺れるなかで、中国には国際公共財としての安全保障を提供する力も意思もない。中国には中東ユーラシアで影響力と関心をもつ主要なアクターとして振る舞ってはいるが、その影響は限定的なものであることを、二〇二五年六月のイランとイスラエルの大規模衝突以降の国際関係は物語っている[前掲書:66-67頁]。


日本が日中戦争を続け、アメリカから石油を停められ「窮鼠猫を咬む」太平洋戦争で滅んだ歴史は、もし台湾有事が長期化したら同じ事の繰り返しになるだろう。

中国の実力を知っているアメリカもかつて日本を追い詰めたようなことはしないだろうし、中国も長期戦の可能性の高い台湾侵攻は行わないだろう。

そんな中で、台湾侵攻を材料に日本の軍備拡張を進め、中国と険悪な関係を作ってしまった高市総理は、信用を失ってしまった国連に活路を見いだそうとしている

彼女が単なる外交音痴なのか策士なのかはアメリカの中間選挙後に分かるだろう。

そして、その中間選挙に大きな影響を与えるのはアメリカがイランとの戦争で中東を中心とした石油が高騰したことである。


*1青木健太 笠井亮平 中東調査会編 2025 『中東ユーラシアから世界を読む―連結する地域と秩序再編』 岩波書店: [青木健太その他 2025]