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2026年9月30日水曜日

老僕は死なず、ただ増えゆくのみ

 我々の世代は交通戦争を生き抜き、受験戦争にも生き延びてきた。

「戦争を知らない子ども」は、当時のベトナム戦争の反戦歌として歌われたが、この歌が流行した1970年は交通事故死15,801人、負傷者981,096人という交通戦争の戦時下にあった。

また、1972年にリリースされた井上陽水の「傘がない」で若者の自殺が歌われているが、その年の自殺者の総数は18,015人である。

ちなみに1970年の殺人による死者数は3,378人である。

2023年当時のパレスティナのガザ地区の戦争による死者が2万人だという。

人口あたりとしては、確かに日本の当時の死者数の方が割合として少ない。

しかし、殺戮兵器が用いられず、しかも平和と感じて生活していた人が、これだけ無残な死に方をしていたのだ。

当時から現在にかけて、資本主義社会における流血戦争とは違う、市民のなかで起こる戦争を戦争としての認識はしてこなかった。

海外で起こる流血戦争をテレビや映画を見ながら、日本は平和であり、戦争はしてはいけないと誰もが言ってきた。

しかし、身近に起こっている市民の中の戦争を止めようとしなかった。

それは自分は加害者になる可能性もあったが、社会に取り残されずに成功者になって勝ち組として生き残ることに励んだ。


こういう戦時下にあって、生き延びた世代として65歳以上の人口が3割に達しようとしている。

退職して老後は子や孫とのんびり暮らして行きたいと思っていたが、その子や孫はそばには既にいなかった。

そのかわり自分の親は施設に預けることができるようになっていた。

今日の特売の火曜市では限定200個のふだんより100円安い卵を求めて老夫婦が殺到した。

雨が降ってコインランドリーがいっぱいとなって、おじいさんは順番待ちに置いてかれた。

来月から第三のビールが値上げだし、電気料金も上がるという。

年老いても、まだ生き残りのための闘いは続いている。

実際の太平洋戦争での流血戦争を経験した人の話はマスコミで取り上げて感動を呼ぶのだが、市民の戦争を生き抜いた話は話題にもならない。

ただ、武井壮のNHKのファミリーヒストリーは、父親が金と女に狂って崩壊させられた家庭を生き抜いた戦士の感動をよぶ実話が放映された。

金の卵として集団就職という名の徴兵によって戦って成功しながら破滅した男の物語でもあった。

世間の豊かさをよそに、懸命に生き抜いてきた武井壮の姿で生きていく力をもらった。


現代は交通事故死は減ったが、中高生が受験戦争などでの自殺者が増えているようだ。

社会に出て戦う前に、受験戦争や家庭問題、人間関係に苦しんで自ら命を絶っている若者が増えているらしい。

武井壮氏の生き様を中高生には知ってもらいたいと思うが、彼のように立派な戦士になる必要は無く、どんなに惨めでも生き抜いた姿だけ学んでほしい。

そして、自分たちは決して平和で豊かなな時代に生きているのではなく、生きるのに厳しい戦時下にあることに気づいてほしい。

これが資本主義の宿命と言ってしまえばおしまいなのだが、生き延びた我々老僕が若い人に残せるのはそういう教訓だけかもしれない。


参考文献

É,アリエズ&M,ラッツァラート 杉村昌昭、信友建志訳 2019  『戦争と資本―統合された世界資本主義とグローバルな内戦』 作品社 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]







2026年9月29日火曜日

イスラーム理解・その3~金融戦争に対抗する無利子銀行

 このところ、日本国債の金利の問題が毎日のようにニュースとなって流されている。

これは為替レートでの円の価格にも大きく影響するし、個人としては住宅のローン金利にも関わってくる重大な関心事だ。

これまでは低金利どころか、マイナス金利と言うことで、多くの日本国民は利子を当てにして暮らすことはなかったし、住宅ローンの負担も比較的少なくて済んだ。

しかし、円安となってしまい、外国からの輸入が増えている日本では物価やガソリン、電気代などが上がって生活を圧迫している。

要するに、金利をめぐる国際的な攻防、いわゆる金融戦争の戦時下にある我々の社会は、つねにそのリスクを負って生活している。

そして、政府はNISAを通して株への投資を呼びかけていて、NHKなどのマスメディアでも子供のこういう金融への教育を大きく取り上げている。


私たちの世代は額に汗して物を作ったり、人にサービスしてお金を稼ぐことが一番尊いことだと教えられてきた。

しかし、今は小学生にも金を活用して儲けることを学ばせる。

NHKテレビでは円安だから、外国で稼いでその金を元手に日本で楽に仕事するというような映像が流れた。

一方Youtubeではオーストラリアの現地の人が、物価や時給が上がりすぎて、発展途上国の低賃金労働者の影響で社会が混乱していることを述べていた。

のの配信者は日本も同じようになることを危惧して動画を流してくれたのだった。

これこそ、国際的な金融戦争の実態であり、そういう金融の抱えている裏の面をマスコミは報道しないのは国民を欺いている。


こういう資本主義国の金融戦争の一方で、独自の経済を築いているのがイスラーム経済である。

その事に関して分かり安く解説してくれているのが、

長岡慎介*1の「未来をひらくイスラーム経済のつなぐ力―その思想と歴史から学ぶ」黒木英充・後藤絵美編 2023 『イスラーム信頼学へのいざない』  東京大学出版会


であり目次は以下のようになっている

はじめに  99 1 金儲けを肯定する経済思想  99 2 商売に埋め込まれたイスラーム経済のしくみ 102 3 イスラーム経済の「つなぐ力」 105 4 現代世界に復活したイスラーム経済 108 5 イスラーム経済とポスト資本主義 111


イスラーム経済は決して金儲けを否定しているわけではなくて、その事業に加わることなく、金を投資してその利子だけを得ることを禁じている。

この書にはそのイスラームの商売や銀行を分かり易く図解して説明してくれているので是非読んで欲しい。

そして、彼が一番訴えているポスト資本主義として次のように述べている

一見すると、このしくみは、これまでのクラウドファンディングと同じように見えます。しかし、商売目的のものと社会貢献目的のものを明確に区別するこれまでのクラウドファンディングと異なり、イスラーム型クラウドファンディングでは、人助けのアイデアのなかに必ず商売が入っているのです。それは、ワクフでは、商売からの儲けを使って困っている人たちのための施設を運営することになっているからです。そうした商売と人助けを融合するワクフの精神が、このイスラーム型クラウドファンディングにも息づいているのです。[前掲書:112]


小学生に金儲けだけ教えて、人助けを教えない学校は、下の下である。

それを文科省は推奨しているというのだろうか?



*1 もっと詳しく解説してくれているのが長岡慎介  2024 『イスラームからお金を考える』   筑摩書房である




2026年9月27日日曜日

アメリカへの食糧依存と日本消費者の無抵抗

 農業経済学者の鈴木宣弘氏は日本の食糧問題をアメリカへの従属として危機意識を高めようという訴えを続けている*1

そもそも、日本は戦後まもなくアメリカからの食糧援助からその依存が始まった。

昭和21年から始まったGHQ(連合国軍総司令部)による米や小麦粉の放出、およびアメリカからの緊急輸入

ララ物資(LARA)は1946年に結成されたアジア救済日本委員会を通じ、アメリカ住民の善意や海外移住者(日系人)からの救援物資(小麦粉、脱脂粉乳など)

学校給食の再開は1947(昭和22)年から、アメリカの援助やララ物資による脱脂粉乳や小麦粉を活用し、全国の小学校で学校給食が部分的に再開・拡充された。

これは、「隠れた戦争経済としての食糧援助。それは貧困国が輸入食糧に依存するよう仕向ける [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]:350」として現在もNGOでも行われている。

敗戦当時の日本は現在のアフリカのサヘル地域同様の飢餓状態にあって、アメリカの食糧援助という経済戦争の支配下にも陥ったのだった。

これ以来、日本人は食糧依存が継続し、グローバリゼーションでの食糧戦争でも抵抗を阻まれてきた。

またこの食糧援助は日本人の食生活を変革し、パンを中心とした欧米の食生活が広まっていった。

学校給食ではパンと牛乳が主であったが、やっと米食も取り入れられるようになった時には、パンを中心とした食事も根付いてしまっていた。


工業や金融では世界でも先進性の高い日本は、食糧に関しては第三世界並の貧困国である自覚がないのが悲劇でもある。

アメリカにとっては、日本の食糧の依存を維持さえしておけば、強い抵抗を受けることはない。

政府とJA、米農家はこういう日本国民の無自覚な食糧依存性を逆手にとって、アメリカに米作だけの特権を許してもらって国民を食い物にしてきた。

何度も繰り返すようにJAは圧力団体として自民党の政策を左右し、見返りとして政治献金と米農家の票を差し出してきた。

今回の米騒動も結局、闇の中で備蓄米が買い戻され、JAの思惑通り米価格は維持されようとしている。

これだけ国民を愚弄した政策を続けられても、生死に関わる食糧を依存してしまっている消費者は抵抗するすべを持たない。

以前から訴えているように、米の輸入も自由化する代わりに、補助金をアメリカに認めさせて、アメリカの米価並みの価格にすれば良い。

本当に安い米は東南アジアから経済支援のつもりで輸入して、困窮している日本の消費者がしっかり食べられるようにすべきである。

しばらくは、米農家の倒産、破産が続くかもしれないが、痛みをともなった改革はどの分野でも経験してきたはずだ。

そして、来るべき世界の食糧危機に備えた力強い農業を再建すべきだと思う。


今日(9/27)も、村の稲刈り時季に行う道作り作業を行ってきたが、銀行の利子以上の高い小作料をもらっている水田地主のために背負い草刈り機で汗を流した。

肝心の水田地主は高齢化でまともに道路や川の土手の斜面の草を刈ることも出来ない人が殆どだ。

人によっては、普段使わない高価なマキタの草刈り機のエンジンがかからないので、熊手を持ってきてぶらぶら歩いている始末である。

水田地主の殆どは肩掛けの2サイクルエンジンの草刈り機でガソリンの混合油なので、その混合油の支給はあるが、私のように4サイクルのガソリンに対して支給はない。

そもそも、水田地主は男性は稲作りで、女性が畑作りの感覚が残っているので、畑仕事をまともにしないし、水田も水管理以外には殆どしない人が多い。

そんな水田地帯の情けない状態を放置して良いはずが無いが、村にはJAに勤めている人が自治会を仕切ったりして改革は出来ない。

JA勤めでない村役を務めた人でも、自分の子供をJAに就職させたりするので、村の自治会とJAの関係は切れることはない。

JAは村の中心的な金融機関になっているが、有価証券の運用失敗で赤字に転落した一方で、米価の高騰や農機の取り扱いで大きな利益を上げた。

村は過疎化してJAは組合員や年金振り込み者も減っていずれ破産していくだろう。

要するに米農家を懐柔しながら食い物にして、米作関連の収益で生き残りを図っているだけだ。

現実の農村ではこのままいくと、高齢化が進んで道作りさえまともに出来なくなって、村人が協力する稲作も終わっていくだろう。

既に、小作料をもらうどころか無償、有償で自分の水田を大規模農家に任せなくてはならない水田地主も出てきているようだ。

何度も述べてきたが、日本の水田はアメリカのように大規模化は難しいし、粗放機械化農業は永続的な生産に反する。

専業農家を支援する体制を農村で維持して、食糧と環境を保全する政策を行うべきである。

それは消費者に現状を理解してもらい、協力してもらう必要がある。

今、日本農業を変革しなければ、来るべき食糧危機には多くの犠牲者を出すことにあるだろう。

その時、裕福な官僚と自民党の政治家や支持者はアメリカの食糧をまた援助してもらって生き残れると思っているのだろうか?



*1   鈴木宣弘 2013 『食の戦争―米国の罠に落ちる日本』  文藝春秋、鈴木宣弘 2025『食の属国日本―命を守る農業再生』   三和書籍

引用文献

É,アリエズ&M,ラッツァラート 杉村昌昭、信友建志訳 2019  『戦争と資本―統合された世界資本主義とグローバルな内戦』 作品社 [ É,アリエズ&M,ラッツァラート2019(2016)]

2026年9月26日土曜日

トランプアメリカの核とレアメタル・レアアース開発戦争

 トランプが「石油を掘って掘って掘りまくれ」と温暖化戦争を仕掛けていることは、すでに述べてきた。

その温暖化やイラン攻撃は結果的に利用されて原子力発電という核開発が見直されることとなった。

原発の廃止を目指していたドイツやイタリアも、化石燃料不足で高騰し原発利用を検討し始めたという。

そして何よりもトランプは日本の軽水炉の原発技術を用い、しかも日本からの巨額の投資によって、原発開発をしようとしている。 

この分野ではアメリカ独自で開発ができず、日本を関税で脅しながらうまく利用して、自国負担もなく利益を上げようとしている。

これは新時代の植民地政策のようにさえ思える。

温暖化戦争は核開発戦争を引き起こし、従属国を利用していこうとしているわけだ。


一方で、アメリカは中国に関税による貿易戦争では、レアメタルを人質にされて思うように戦えていない。

そこで、日本の鳥島のレアメタル開発に目をつけたようだ。

日米による開発も高市はトランプと協議したように言われている。

しかし、鳥島近辺での開発は環境への影響が懸念されており、それを無視して進めていくことには大きな問題となるだろう。

中国がこの分野で有利なのは環境破壊を無視しているからで、日本は海洋という広く世界に影響が出ることを無視することは信用を失うことになるだろう。

とにかく、トランプとその子分の高市は環境を人質に貿易戦争を有利に戦おうとしている。


一方中国は高市のアメリカ依存に対して、トランプを懐柔して歯止めをかけようとしている。

おそらく米中首脳会談では台湾問題やレアメタル・レアアース・AI開発問題が話し合われたであろうと思う。

これまでは日本が中国に接近することにアメリカは神経をとがらせてきたが、高市ではその警戒はそれほど必要ない。

トランプにとって中国も日本も上手く利用できれば良いのであって、日中関係が悪い方がアメリカにとっては都合が良いとも言える。

ただ、今度のアメリカの中間選挙で共和党が大敗北すれば、トランプの独裁は終わるだろうし、それは高市の独裁の終わりともなるだろう。

そうなれば、日中関係も変化するだろうし、それこそ大きな地殻変動が起こるだろう。






2026年9月24日木曜日

イスラームの理解その2~中国の挑む国際秩序再編と米中関係

 今回のアメリカ・イスラエルによるイランへのミサイル攻撃で、イランの防空システムの脆弱性が明らかになった。

どうも、ロシア製、中国製、自国製の混在で指揮統制や通信ネットワークの統合が不十分だった可能性が指摘されているようだ。

そんな中で、イランが中国から携行式防空ミサイル発射機を最大400基調達する契約を結び、数週間以内に初回分の引き渡しを受ける見通しが報じられている。

これで低空飛行する戦闘機、ヘリコプター、ドローンへの攻撃が可能で、アメリカとイスラエルはミサイル以外では安易にイラン攻撃が出来なくなりそうだ。

これで、アメリカが手を引けば朝鮮、ベトナムから続く大失態とも受け止められそうだ。


そんな中で、米中首脳会談が行われ、トランプ大統領は習近平国家主席を自ら空港まで出迎えるほどの歓待ぶりに、アメリカの中国への配慮を知ることが出来た。

この米中関係に関しては、Yahooニュースで呉心伯氏の次の見出しで見解を報道している

「5年後にはアメリカ上回る」 習近平氏の外交ブレーンが語る米中首脳会談の狙い 日本には強く警告「米中対立 期待すべきではない」

この記事に関しては多くのコメントが寄せられているが、日本は高市総理の対中政策が正しいのか誤りなのかを考える一つの材料になるだろう。

トランプ大統領は米中首脳会談の前に高市総理と会談する配慮を示したが、その内容は明らかではない。

私はトランプ大統領は日本も中国も上手く利用としているだけで、東アジアでのイニシャティブを軍事力をもって維持しようとする意図は無いと思う。

米中首脳会談では第二次世界大戦では同盟国だったとトランプは述べ、習近平もファシズムにともに戦ったと述べたという。

朝鮮戦争では戦火を交えた関係よりも、中華民国時代の関係を持ち出すことは、両氏とも台湾を含んだ中国という姿勢に思える。

すでに、北朝鮮に対しても米韓の軍事演習を短縮して配慮しており、相手の国が民主的な国かどうとか資本主義かどうかは、もう政策の決定事項ではないようだ。


とにかく、我々は中国がどういう意図をもって外交政策をして、その実力はいかなるものかを知っておかねばならないと思う。

相変わらず北朝鮮からの弾道ミサイル実験で日本では大騒ぎしているが、今起こっている戦争では核を用いない限り、迎撃も可能でそれほどの脅威にはなっていない。

温暖化による災害や交通事故で亡くなっている人の数の方が、弾道ミサイルで亡くなっている人の数よりも多いだろう。

日本人は流血戦争の総力戦を恐れているかもしれないが、それこそ核抑止力によってそれが出来ない状態のようだ。

台湾有事に関しても現在行われている戦争が参考になるので、中国も簡単に事を起こさないように思える。

そもそもアメリカを抱き込んでしまえば、台湾は戦争しなくても手懐けると思っているようにさえみえる。


それよりも、経済戦略による貿易戦争の方が、重大な意味を持ってきている。

その参考になるのが三船恵美「国際秩序再編に挑戦する中国と中東ユーラシア」[三船恵美2025]*1である。

その目次は次のようになる。


はじめに 

1 既存の国際秩序に挑戦する中国  

(1)「新時代の中国の特色ある大国外交」による挑戦  (2)中国の大国外交と中東  

(3)多極化の模索と対中東外交 

2 ユーラシアの連結性と中東  

(1)陸と海から見る中東   (2)「人類運命共同体」構想の手段としての「一帯一路」 

(3)中東に対する「1+2+3」協力枠組み  

3 中東ユーラシアの秩序再編から見る中国との関係  

(1)UAE   (2)サウジアラビア   (3)オマーン  (4)イラン  

おわりに 


この論攷で述べられていることの要点を上げてみると、まずアメリカに対しては次のように述べている


「人類運命共同体」の構築へ向かう中国は、国連、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの多国間レジームを重視する姿勢を打ち出している。そこには、アメリカ一強の国際秩序に抵抗し、多極的な世界の形成を促進する意図がうかがえる[前掲書 52頁]。


そのために行おうとしているのが「大国外交」であり、それに関しては次のように述べている。


中国の大国外交とは、中共による一党独裁体制のもとで、欧米型のデモクラシーとは異なる「中国的民主【(7)】(minzhu)」の政治システムを非欧米諸国とお互いに擁護し合い、途上国としての既得権益を維持し、世界政治に影響力を及ぼす大国として振る舞う外交[前掲書 53頁]


つまり、欧米の民主主義とは一線を画す政治システムを、非欧米諸国と共有してその中心に位置しようとしている。

日本は非欧米諸国なのかどうかが問題となるが、それが微妙な立場だと言うことが分かるが、それは次のような中国の歴史的背景や現状認識と関わっている。


この背景には、「屈辱の歴史」の経験や、冷戦後にアメリカ主導で築かれた国際秩序が中国の核心的利益を侵害している、という中国の強い被害者意識がある(中略)アメリカが経済覇権を築いてきた要因の一つの、ペトロダラー・システムを崩す「脱ドル」を推進するには中東の主要産油国を引き込む必要があるという[前掲書:55頁]


日本は中国に「屈辱の歴史」を与えた国でもあるが、アメリカの経済覇権の恩恵と辛酸をなめてきた国でもある。

「脱ドル」を指向した時もあったが、すぐにアメリカに潰されてしまった。

この「大国外交」こそ日本が戦前に欧米支配に対抗して打ち出した「大東亜共栄圏」の、中東ユーラシア版と言えるのかもしれない。

ただ、日本がアメリカに宣戦布告したような愚を犯そうとはしていない。

三船恵美氏は次のように結んでいる。


中国は従来のアメリカの役割や優位性に取って代わろうとしているのではない。中国が描く中国主導の新たな中東ユーラシアの国際秩序観は、アメリカの優位性を排除したり弱体化させたりしようとするものである。しかし、中東ユーラシアの国際秩序が大きく揺れるなかで、中国には国際公共財としての安全保障を提供する力も意思もない。中国には中東ユーラシアで影響力と関心をもつ主要なアクターとして振る舞ってはいるが、その影響は限定的なものであることを、二〇二五年六月のイランとイスラエルの大規模衝突以降の国際関係は物語っている[前掲書:66-67頁]。


日本が日中戦争を続け、アメリカから石油を停められ「窮鼠猫を咬む」太平洋戦争で滅んだ歴史は、もし台湾有事が長期化したら同じ事の繰り返しになるだろう。

中国の実力を知っているアメリカもかつて日本を追い詰めたようなことはしないだろうし、中国も長期戦の可能性の高い台湾侵攻は行わないだろう。

そんな中で、台湾侵攻を材料に日本の軍備拡張を進め、中国と険悪な関係を作ってしまった高市総理は、信用を失ってしまった国連に活路を見いだそうとしている

彼女が単なる外交音痴なのか策士なのかはアメリカの中間選挙後に分かるだろう。

そして、その中間選挙に大きな影響を与えるのはアメリカがイランとの戦争で中東を中心とした石油が高騰したことである。


*1青木健太 笠井亮平 中東調査会編 2025 『中東ユーラシアから世界を読む―連結する地域と秩序再編』 岩波書店: [青木健太その他 2025]


2026年9月23日水曜日

結婚も恋愛もできない男と女

 今から20年ほど前に「結婚できない男」というドラマが関西テレビで放映されたが、私はそのビデオをレンタルして何度も見返して楽しんだ。

主人公は結婚できるだけの経済力を持ちながら、あえて独身を楽しんでいるが、結果的には女性を好きになっていく物語だ。

私は教師をしていた時に周りに結婚できない・しない男女を数多く見てきた。

ある学校でこのドラマに出てくる女医と隣人のOL(みちる)の関係に似ている女性教師がいて、それを二人に言うと酷く怒られた。

女医に似ていたのは体育教師で、ラウンドクルーザーを乗り回す活動的な人で、おそらくその後も独身が続いたと思う。

みちるさんに似た方は、まもなく同じ職場の男性と恋仲になって結婚していった。


独身を続ける教師のタイプは男女ともに真面目で、異性との恋愛の経験が無かったようなタイプが多かった。

そういう人は受験指導やクラブに熱心に取り組んで、時間を持て余す風ではなかった。

実は私の家内もそのようなタイプだったが、事務職の仕事が臨時で不安定だったことと、家内の母親が強引に見合いをさせていたことで私と出会った。

私は高校生から女性と付き合うことも多く、恋愛結婚も経験したが離婚した後は、やはり母親が強引に見合いを持ってきた。

私のように恋愛とか結婚を失敗した人の中には、それに懲りて独身を続ける人もいた。

当時の正教諭は地方においてはそこそこの定収入が得られるので、結婚相手としては申し分なかったが、近年ではブラックな仕事として人気を失ってしまっているようだ。

中には国立大学の大学院まで出て容貌も悪くなかった男性教諭もいたが、本人が結婚を望んでいても自分で相手が探せず、集団見合いに参加したりする若い人もいた。

結婚願望はあっても、異性どころか人間関係そのものが苦手な人もいたように思う。


私の父母の時代は恋愛結婚はあまりなく、殆ど見合いとか紹介だったようだ。

私の両親も遠い親戚に当たり、紹介されて付き合い始めたようだ。

家内の父親などは、独身だった時に村に帰ったところを、親戚から独身かどうか尋ねられて、独りだというともらってやってくれと頼まれたそうだ。

家内の母親は「犬じゃあるまいし」と怒っていたそうだが、義父は義母を結婚後も何十年と大切にし続けていた。

当時は恋愛など関係なく、生活のために結婚するのが当たり前だったようだ。

ところが、それは古くからの伝統ではない。

日本が工業化していくまでの時代の農家では跡継ぎ以外の子供は家から出されるか独身のまま家にいた。

町などでも丁稚に出されてから店を持つ主人になれるのは一部だったようだ。

結婚できても、生活が不安定なので結婚と離婚を繰り返すのが普通だったようである。

奄美諸島では古くは家人という身売り制度があって、正式な結婚そのものができない人が人口の3割近くいたようだ。

そういう人でも男女間の自由な恋愛で子どもは産まれて、家人所有者の主人には喜ばれたようだ。

身分が固定されて人口も多くなかった時代は、現代のように安定した夫婦家族はあまり見られなかったようだ。

それでも結婚率は戦前までは1000人あたり8~9人を維持しており、戦後のベビーブーム時代の12人には及ばなかったが、現代の3.9人(2023年)の倍以上はあった。


結婚願望がなかった家内に今の若い人が結婚しない理由はなぜだと思うと聞くと、女性が仕事と育児でしんどい思いをするだけだからと言う。

それなら、男性も結婚したがらない理由はなぜかと聞くと、答えられなかった。

私は、家内の時代のように、親が無理強いしなくなったことと、そもそも日本人は家畜化が進んで恋愛も結婚もまともにできない人が増えたのではないかと答えた。

人間以外には発情期があって、本能的に子作りをするが、家畜化すると人間以外でも発情期を失ってしまう場合が多い。

そして、家畜化されると一年中交配し、出産することが出来るようになる

家畜の場合は無理矢理交尾させたり、人工授精させるが、人間の場合はそれを無理矢理させることはできない。

なぜ日本人はより家畜化が進んでしまったかは、子どもの頃から親の干渉が強いし、小さい頃から勉強しいられて児童虐待まがいが起こっている。

親と先生に厳しく飼育された子どもは、まともに恋愛も結婚もできなくて当たり前に思える。

行きすぎた家畜化は動物園の飼育と同じで、飼育化と言っても良いかもしれない。

これからは結婚できない男女があたりまえになって、恋愛できない男女がドラマになる時代なんだと思う。


参考文献

 ブライアン・ヘア/ヴァネッサ・ウッズ 藤原多伽夫訳 『ヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 2022(2020) 白揚社 










2026年9月22日火曜日

水は血よりも濃い

 敬老の日に、私はつまらない替え歌を早朝にブログに書いた後、いつものように朝食後に犬の散歩と農作業や家の片付けをした

午後からは通常月曜日は隣町のプールに行っているのだが、今日は休日で住んでいる町のプールも開いているのでそちらに行くことにした

プールは体育館や野球場、テニスコートの近くにあるので、休日になると駐車場が満杯になって停めづらい

なんとか空きのスペースを見つけて、いつものように年券を使って受付を通り、水着に着替えた

今までゴーグルの曇り止めを使っていなかったが、やっと通販で買って塗ると、やはり見通しが良くて泳いでいて気分が良い

若い妻と孫のような息子を連れた6歳上の知り合いが、家族仲良く泳ぐ練習をしているのを横目で見ながら、いつものメニューをこなしていった


町のプールには6コースある大プールと子供用の浅くて狭い小プールがある

来た時から子連れの見知らぬ家族が楽しんでいるのは気づいていた

こういう休日には里帰りで来た家族がたまに遊びに来る

私のいる町は遊べる施設がないので、家族や親戚が大勢プールに来る時もある

たいていは、その中のお婆さんとかが水泳を習っていて、子や孫づれの家族を誘って来ているようだった

今回は若い女性二人と、幼い子供が二人、それに加えて、お爺さんとお婆さんと孫が二人来ていた

この二組の集団は別々のグループらしく、若い女性のグループは観覧席にお父さんらしい人もいた

練習メニューをこなしていると、私の知り合いもやってきて、時々話をしながら泳いでいた


そのうち、若いお母さんらしい人が、子供をもう一人の若い女性に任せて一人で大プールに入って空いたコースで平泳ぎを始めた

一目で経験者と分かる泳ぎ方でスピードも速かった

やはり、経験していた人は、プールに来ると泳ぎたくなるものらしいが、水着は競泳用の水着ではなくレジャー用だった

知り合いも帰り、大プールのコースが空いてくると、若い女性二人はそれぞれ子供を連れて入って泳ぐ稽古をさせていた

泳ぐ稽古と言ってもまだ幼すぎるので、恐がらずに浮いているのがやっという感じだった

どうもよく見ていると若い女性は姉妹で、お姉さんの子供二人を一緒に遊ばせてやっているようだった。


そして、若い妹の方が今度は一人で私の泳いでいるコースの隣で泳ぎ始めた

お姉さんよりは遅いがしっかりとした平泳ぎをしていたので、声をかけて水泳の経験者か聞いたら、やはり経験者だった

着ている水着はフィットネス水着で、その下にはレジャー用の水着を着ているようだった

もう少し話がしたかったが、県外からの人のようで話題が頭に浮かばず、黙ったまま並んでしばらく泳いでいた

そのうち、お姉さんの方も隣にやってきて、バタフライをきれいに泳いだので、こちらの方は選手経験者だと思った

私は四種目練習の最後でフリーの50mダッシュも4本行って、最後のメニューになっていた

最後は200m個人メドレーで締めるのがいつもの決まりである

その若い女性の二人には、若い人でも滅多に泳がないこの種目を、こんなじいさんでも泳げるのだと見てもらいたかった


果たして、その水泳経験者は私の懸命の泳ぎをしっかりと見てくれたかどうかは分からない

私は礼儀知らずのスイミングスクールの生徒がやって来る前に出ようと、そのグループを横目に見ながら引き上げていった

こうして、若くて可愛い女性と少しでも話が出来て、並んで泳げる楽しい時間を久しぶりに味わった

敬老の日としては誰からも何もされなかったが、こうして若い女性と一緒に泳げたことが最高のプレゼントとなった

老いた者として敬ってもらうより、まだ若い者として一緒に楽しめる方が幸せなように思えた

水泳は並んで泳いだり、競い合って泳いだり、相手の美しいフォームに見とれながら泳ぐ楽しみがある

特に若い人は男女を問わず美しい体型を維持している人が多いので、いつも羨ましく見惚れている。

かつては血は水よりも濃いと言われて、家族や親戚を大切にした

しかし、今は血のつながった子どもよりも、他人でも同じ趣味をもった人との関わりが大切になっている

まさしく、水泳という「水」でのつながりは、血でつながった子どもよりも濃い時間を過ごさせてくれた





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