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2016年7月10日日曜日

クロのプチ家出

クロが我が家に来ておおかた一年になる。
先日そのクロが家出した。
以前も庭の檻から何度も脱走を繰り返したが、いつも帰ってきていた。
今回も一度近くまで帰ってきたが、捕まえようとして再び逃げてしまった。
今までに逃げ通せたことは無かった。

その日の朝、散歩の時に、狢を見つけて追うので紐を放したのがいけなかった。
長いリード紐でつないでおいたので、何とか捕まると思ったが、山の中に入ってしまった。
私は一度家に帰って山に入れる格好をして、探しに行った。
鳴き声がして、どこかに引っかかっていることが分かった。
声をかけると鳴き声はやんでしまった。
捕まるのを懼れたのだろう。
以前、紐が切れて脱走したときに捕まえて、こっぴどく叩かれた経験がそうさせたのだとだと思う。
山に入って探してみたが鳴き声がしなくなったので、見当が付かなくなった。
家に帰って家内と車でもう一度来たときには、もう紐から放れていたのか鳴き声はもう全く聞こえなかった。
クロはリード紐くらい食いちぎれることは分かっていた。

腹が空いたら帰ってくると思っていたが、案の定夕方になったら近くまで戻って来た。
近所の奥さんがわざわざ知らせに来てくれたのだが、家内が息子にに頼んだのが悪かった。
一番の適役は、普段クロをかわいがっている家内なのである。
当然自分には無理だが、クロは息子から呼び寄せ用のジャーキーだけもらって逃げてしまった。
私も駆けつけて、田んぼの土手にいたので、挟み撃ちにしたが、田んぼの中を走って逃げた。
必死で跡を追いかけたが、今回は全く追いつけなかった。
その後息子に追わせて、自転車を取りに戻ったが、自転車で戻ったときには姿が見えない。
家に戻って携帯電話で連絡を取ったら、高田台の池だと言うので、軽トラで出かけた。
ようやく見つけて溝に入っているのを見つけて挟み撃ちにしようとしたが、ワンと吠えて逃げていった。
高田台の坂道を上り、崖の森に入ってしまったので諦めた。

考えてみれば前回紐が切れたときに捕まえられたのは、真剣に逃げていなかったと言うことだったのだ。
切れた紐が付いていたこともあるが、本気で逃げる気では無かったことも確かである。
それを思いっきり、叩いたことが悪かったようだ。
クロとしては遊んだつもりだったのだろう。
今回は本気で逃げている。
猟犬は訓練した後に放さなければいけないことは分かっていた。
訓練もさることながら、クロとは信頼関係が築けてなかったように思う。
それはなんといっても遊んでやってなかったからだろう。
力尽くで従わせようとしたところもあった。
以前飼っていた犬とクロとの違いは、遊んでやっていたかどうかが大きいと思う。
シェルティーの雌犬モモは常にそばにいようとしたのも、かわいがってもらえたからだろう。
ただ、雄犬はじゃれ方が半端ではないので、かわいがることも面倒だった。
せめて遊んでやることを考えれば良かったと思う。
そう思いながら、帰ってこないクロを一晩待った。

翌朝、クロは戻って来て檻の中にいた。
さすがににいつもいる縁台には座れなかったのだろう。
そこには家内が餌を入れて置いていたのだが、食べてもいなかった。
その日は餌だけやって散歩には連れて行かなかった。
家内は「散歩に連れて行ってやって」といったが、「是々非々で行く」といっていかなかった。
今回は当然叩かなかったし、怒りもしなかった。
そんな不気味な態度の私に対して、上目遣いで見ながらクロは一日しおらしく檻の中にいた。
うっかりと檻の扉に隙間を空けていたのにも関わらず、外出して戻って来ても逃げてはいなかった。
夕方は散歩に出たそうにしたが連れて行かず、翌日から普通の散歩に戻った。

戻ったクロにはハーネスは着いていたが、引き綱の留め金は着いていなかった。
これは人が外さないと無理だと思う。
誰かが引っかかっているクロを外してくれたのかもしれない。
それにしてもまるまる一日の脱走劇ではあった。
思う存分外を逃げ回ったのは良いが、結局帰らざるを得なかった。
殴られる覚悟はしていたと見えて、私の姿におびえていた。
今回は殴れなかった。
もし、昨日捕まえていたなら思いっきり殴っていただろう。
それがクロにはよく分かっていたのだと思う。
いわゆるほとぼりの冷めたところで戻って来て、反省の意志を示すことまでした。
私はクロは二三日家出して、やせ細って帰ってくるかと思ったが、それほど外の世界を望んではいなかったようだ。
食い物をもらえて安心して眠れるところが、どれほどありがたいか元野良犬のクロは知っているのだろう。
逆に言えば出て行って帰ってこないということは、外で生きていく術を知っているか、一緒にいるより、のたれ死んだ方がましというわけだ。

世間でよくある離婚や家出というのもそういうことかなと思ったりした。
自分たち夫婦がやってこれたのは、子育てという共同作業があったからだ。
昔、鳩を飼っていたが、鳩は子供がいると必ず小屋に戻ってきた。
その子育ての中で夫婦ができあがってきたのだろうと思う。
とにかく、今回の逃走劇は色々考えさせられたが、クロが他の人や物に危害を及ぼさなくて良かったと思う。
クロが危害を加えそうな雰囲気では無いので、周りも騒がずにいてくれているのだろう。
それなりに地域に馴染んでいることも確かである。
クロともこれを機会に新たな関係を築かなくてはいけない。
もう力尽くではだめだと分かったからだ。
そしてこのことは人との関わりも遊びの部分が、必要なのだということも学んだ。

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