私の父母は中学校に行っている程度で、高等学校に行っていない。
父は中等学校に進学したが、卒業1年前に家業の船運送業のために中退させられた。
母は、中学校を出てから洋裁学校に通ったが、会社勤めの経験は無い。
祖父母の学歴はよく分からないが、父母よりも高いとは思えない。
一番仕事で羽振りが良かったのは、父方の祖父で船運送業で稼いで、それを子供に譲ってからは造園業を営んでいた。
あまり、人には大きな声で言えないが、四国には妾さんもいて、その人の子供の面倒まで見ていたと聞いた。
父はもう一年で高校卒の学歴がついたのに、辞めさせられたと怒っていたが、祖父にしたら家業の役にも立たないことは遊びと同じと思ったのだろう。
因みに母方の祖父は、職業軍人として海軍に入ったが、除隊後米屋を営んだり、造船所で働いたりしていたが、招集されて戦死した。
父方の祖母は勤めの経験が無いが、百姓のかたわら7人の子供を育てた。
母方の祖母は夫が戦死した後、造船所で勤めていたが、遺族年金があったから子供が成長してからは辞めた。
父母は、中卒ながら田畑を買って、家を建てて、4人の息子を大学までいかせた。
高度経済成長期で時代が良かったのだとも思う。
今、不登校が問題になっているが、もし、学校へ行かなくても、普通に生活できれば何ら問題は無いだろう。
教育史や教育社会学の論を俟たなくても、普通に考えれば分かることだ。
学歴が無くても、何ら問題なく仕事を手に入れることが出来たのが、祖父母の時代だった。
私の村落調査した奄美の与路島では小学校でさえまともに行っていなかった人が、20年ほど前まで立派に民宿業や商店を営んでいた。
そういう人は、漢字や計算を学校では無くて、必要に迫られて独学したようだ。
そもそも、目が不自由な人でも、一人で商売が出来ていたのだから、どれだけ周りの人が気を配ってくれていたか分かると思う。
助け合って生きていかないと、小さな島では生きていけなかった。
しかし、かつて黒糖生産力が高かった頃は、家人(ヤンチュ)という過酷な強制労働制度で苦しめられた時代があった。
国家は人と人の争いを防ぐためにあるのだが、人と人とが競争して、仕事に励むことを奨励している。
学校がそのために必要不可欠だったのだが、もし、一般の人が競争を拒否して、助け合った社会を築いていたら、学歴など必要なかっただろう。
しかし、現実は高学歴の者が高収入を得て、羨望の的になった。
それでも、今住んでいる農村地地帯の村では、私たち夫婦以外に大卒者はほぼ住んでいない。
稲作農業によって潤い、立派な家を建て、婿養子をとっている家も少なからずある。
ところが、農業の衰退と共に、少子高齢化がどんどんと進み、幼稚園や小学校の統廃合が進んでいる。
若い人も大学へ進学したら、跡取りでも地元には帰ってこない。
そういう時代の中で、不登校だけを問題にするのはおかしい。
学歴がなくても商売が出来たのは、以前は大店舗が規制されていたからだ。
学歴がなくても農業で生活できたのは、農産物の自由化が抑制されていたからだ。
だから一番の問題は、学校へ行かなくても生活が出来る場を、政策によって奪われてしまったからなのだ。
そして、競争が苛烈になって、それについていけない子供達に不登校が多く誕生して当然だ。
かくいう、私は中学受験から競争にさらされてきた一人だ。
確かに、小学校の6年生での受験勉強は一番勉強したと思う。
しかし、それまでは剣道をしたり、カブスカウト、ボーイスカウトに入って楽しんでいた。
今は、中学受験は小学校3年くらいから準備せねばならないらしい。
また、いったん私学に入ってしまえば、高校受験もないし、受験対応の授業なので塾にも行かず、バンド活動に明け暮れていた。
私は浪人して三流大学にしか行けなかったが、私のバンドの友人は欠点だらけの成績の学年最下位で早稲田大学の法学部に現役合格できた。
今ほど公立高校が受験に対して熱心に取り組んでいなかったからできたのだろう。
今は、母校はそのゆるい指導のせいか、進学実績はかなり落ちているようだが、公立がその分伸びているのだから、それもしかたない。
前の環境大臣を輩出した学校は、過去の栄冠でしかなくなった。
不登校をなくすには、学校を居心地良くするしかない。
当然、競争をほどほどにするしかあるまい。
それでGDPが落ちて、世界4位以下になっても、多くの人が幸せに感じられ、学歴に絡んだ無差別殺人事件が発生しない方が良いと思う。
かつての奄美が黒糖生産で食い物にされて荒んでいたのが、経済力を失って、過疎に悩みながらも、心豊かに暮らしていたのが見本だろう。
また、逆の観点で考えれば、学校に行かなくても、生活が成り立てれば良いのだ。
狩猟・漁労・採集+自給的農業と特産品のネット販売というのも一つの案だが、まだ答えは見いだせない。
とにかく、ブラック企業と言われる学校に責任を負わせすぎると、今度は教師が不登校になって学校が崩壊するだろう。
実際、教師のなり手がどんどん減って困っているのだが・・・・