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2024年7月5日金曜日

住宅ローンと債務労働

 身近な人の中に、家を建てたとたんに、転勤となって単身赴任になってしまったり、すぐではなくて子供が転勤で連れて行けなくなった頃に、単身赴任というケースを知っている。

公立の教員が単身赴任するのは、結婚後に採用されて、奥さんや子供の関係で、単身赴任していた人を知っているが、大抵は管理職になるためだった。

私はどちらのケースでもなかったので、単身赴任の経験はないが、民間に勤めている弟3人は単身赴任を全て経験している。

そして、全員が家屋敷を持っている。


元来終身雇用は、労働者を確保するための仕組みだった。

現代は一つの企業や団体しか雇用された経験が無いという人は少ないだろう。

でも、家屋敷をもったり、子供が大きくなってから転職する人は少ないと思う。

弟の一人は、家屋敷を持っていて、通えるところではあるが転職したが、子供がいなかったからできたのだと思う。

私は、家のローンが終わり、子供も独立したので転職したかったが、果たせず早期退職した。

単身赴任が全て悪いとは思わない。

江戸時代の武士は、参勤交代で江戸にいる時は、妻子が人質の大名以外は単身赴任だったようだ。

ただ、現代のように何年も続けて単身赴任生活をすることは無かったようだ。

また、江戸時代は遊郭での楽しみを期待していた武士も多かったようだが、現代ではどうだろう?


発展途上国の人の中には借金を背負って過酷な労働をさせられて、問題になっている。

かつて奄美のヤンチュは税が払えず、身売りして強制的に黒糖生産の労働させられた。

ヤンチュの場合は税さえ厳しくなかったら、債務労働はしなかっただろう。

与路では殆ど自給自足で生活できていたし、貧しくても家は自前で建てられた。

戦前まではこういう自給自足できる人には、税や小作料で借金を背負わせて身売りさせ、強制労働させたり、売春をさせるのが普通だった。

自己破産が可能な現代ではそういうことはできないので、家屋敷のローンを抱えた者が、単身赴任のような強制労働をせざるを得なくなる。

単身赴任が原因で健康を害したり、離婚したり、子供に問題が起こっても、雇用側には一切責任はない。

雇用側の都合で配置転換できるのだ。

ただ、中には親の介護から逃れたりする時に、都合の良い言い訳にできることも確かだから、一方的に雇用者側が悪いとも言い切れない。

一時CMで「亭主元気で留守が良い」流行ったが、わがままな亭主はいない方がましなようだが、退職後の夫婦はどうなったか気になる。


ということで、結婚していない人や、家屋敷にローンを抱えず賃貸などの人は、この強制労働から逃れることができる。

今まで企業が単身赴任で家族をバラバラにしているのを知っている世代は、あえて同じ轍を踏むのだろうか?

結婚しない人や子供を産まない人が増えたのは、こういう経営本位の人事風土が招いた結果ではないだろうか?

かつて『仕事の人類学-労働中心主義の向こうへ』(  中谷文美 宇田川妙子編 2016 世界思想社)を読んでいて、家族や親戚が暮らしのために協力し合っている姿を知った。

賃金労働が当たり前になった現代でも、優先すべきを家族や親戚とすれば働き方も変わってくる。

こういうことを言っても、自己実現を掲げて学歴社会を生き抜いた企業戦士には笑われるだけかもしれない。

確かにその企業戦士もその一方で債務労働者として苦労した人も多かっただろうが、都会の人は家屋敷は立派な財産となったのだろう。

しかし、地方の多くでは家屋敷は財産どころか負の遺産になってしまっている。

このままでは単身赴任までしてローンを支払い維持した家屋敷を、子供に迷惑かけられないので赤字覚悟で処分せねばならない人もいるだろう。

まさしく、地方のサラリーマンは発展途上国の債務労働者とかわらなくなったのではないだろうか?




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