現代はニヒリズム(虚無主義)の時代と言われている。
人の価値を否定する考え方だが、キリスト教が根底にある欧米人にとって重大な問題である。
ところが、日本人はそもそも仏教にしろ神道にしろ、根底にあるのはアニミズムなので、経典や思想は呪文ほどの意味しか持ってなかった。
これは現代の仏教に縁の無い若い人がパワースポットにはまっているのとそう変わりは無い。
また、心霊写真や幽霊話は今でもテレビなどでもよく登場している。
ただ、これも個人差があって、そういう霊的な存在をあまり信じない人もいることも確かだ。
私は母方も父方も祖母が信仰深かったし、特に母方の祖母は霊的な体験を語る人でもあった。
それに対して、家内はそういう祖母が傍にいなかったせいもあって、霊的存在をあまり信じていない。
また、都会で幼い頃から育った人は、自然界の霊的な存在には無関心のような気もする。
一方で、宗教の説教や聖書などに親しんできた人は、霊的存在もさることながら、その教えや世界観の影響かなり受けていると思う。
私は中学から大学までカトリック系の学校で学び、聖書に親しむことも多かったが、仏教以上に生活に根付いたものでは無かった。
仏教といっても葬式や先祖供養に関わるもので、思想的な影響はあまりない。
ところが、幼児洗礼を受けた私の大学の友人は、話していてもかなりカトリックの影響を受けていることが感じられた。
私がキリスト教に改宗しなかったことを残念に思ったのは、大学院時代にキリスト系の大学からの求人があって、先生から信者かどうか尋ねられたときだ。
もし、信者であったら優先的に採用されていただろうと思った。
考えてみれば、母校の南山大学でも信者の先生が同じ学科にいた。
その程度のものでどちらかと言うとキリスト教には懐疑的なところがある。
文化人類学者のエマニュエル・トッドは、宗教の信仰形態を活動的状態、ゾンビ状態、ゼロ状態に分類している。
そして、現代の欧米を一部例外を除いて宗教ゼロ状態になって、ニヒリズムは、ヨーロッパにもアメリカにも存在し、西洋の全域に遍在していると述べている [E・トッド2024:170-173]。
文化人類学では呪術と宗教を区別したり、世界宗教と民俗宗教を別次元で考えたりするが、トッドの言う宗教には呪術や民俗宗教は含まれていないだろう。
確かに、世界宗教や国家的宗教は活動として形骸化したり、殆ど信仰されなくなったりしているかもしれない。
しかし、その一方でかつてはそういう宗教から異端とされていたカルトが、現代では一部の熱狂的な信者を生んでいることは確かだろう。
また、新宗教もかつてはカルト的存在であったのだろうが、多くの信者を得てカルトとは言われなくなったりする。
今回トランプを支えている福音派はキリスト教の聖書や伝道に立ち返る原理主義や根本主義と考えても良さそうだ。
カルトに関しては日本のオウム真理教や統一教会のように、テロ事件と関連して解散させられる場合もある。
一方で福音派のようにアメリカ大統領に多大の影響力を与える場合もあるのだ。
トッドはニヒリズムの戦争への影響を述べているが[前掲書:360-362]、イラン戦争に関しては原理主義同士の戦いの様相を呈している。
テロや戦争が生じる根本にはニヒリズムの中で却って霊や超自然的存在、聖書などに熱狂的な信仰をもつ人々の存在が有るように思う。
これは行きすぎた資本主義による経済という名の戦いが生んだ殺戮兵器による戦争とも言えるかもしれない。
その一方で、歴史的な十字軍の戦いが原理主義信仰の元で、核開発と石油を根源として再発したかのようにもみえる。
引用文献
エマニュエル・トッド 大野舞訳 2024 『西洋の敗北―日本と世界に何が起きるのか』 文藝春秋
といっている。
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