今回の冬のオリンピックのフィギアスケート女子の金メダリストアリサ・リュウは、母は匿名の卵子提供者で、代理母を通して生まれたという*1。
しかも、弁護士である父親はシングルファザーだという*2
日本では代理出産は実質禁止されているので、日本人は海外でしか行えない。
だから、アメリカではしっかりと代理母によって生まれた子どもが父親だけの手で育てられて成
長し、オリンピック選手として国を代表し、世界の頂点にまで上り詰めていることに驚いたと思う
実は代理出産に興味を持ったのは、ウクライナのことを調べている過程であった。
ウクライナでは外国人と代理出産の契約を結ぶことが許可されているため、国際的な代理出産の拠点となっている
2014年のウクライナ紛争以後には避難してきた若い女性が金を得るために業者と契約する事例が、紛争以前より増加した
というように、我々日本人の抱くイメージとは違う貧困による商業の側面を持ち、金メダリストを生む代理出産を単に喜んでだけはいられない
このこともあって、私は代理出産について次の文献を読んでみた
デポラ・L・スパー 椎野淳訳 2006『ベビー・ビジネス―生命を売買する新市場の実態』ランダムハウス講談社
これは20年も前の書籍で、商業的代理出産の規模は小さかった時代の物だが、当時と状況は根本的には変わってないと思われる。
「第3章 子宮を貸す女性たち代理出産市場の出現」でD,スパー氏は代理出産の起源を聖書からの引用で、主人が主に使用人を
使ったり、可能なら第二夫人や愛人を利用したことが述べられている[前掲書:111]。
これは奄美で行われた主人がヤンチュ(下人)に子どもを産ませたりしてそれをヒザとよんだことと通じる。
育てるのは主人の正妻なのか、使用人なのか、乳母なのかという違いが出てくるし、正統な後継者として認められるかどうかも違ってくるだろう。
とにかく医療が発達するまでは妊娠出産は妊婦への負担や命の危険を伴うので、強要されるかそれなりの見返りが無いとできるものではなかった。
ともかく、複婚、奉公、奴隷、愛人・妾を利用して子どもは正妻以外に誕生してきたのだ。
これらは、欧米文化を中心とした近代化で否定されることになった。
また、売春は商業として発展し続けてきたが、代理出産の商業的な発展は無かった。
それが、人工授精(AIH)によって「受胎は性行為と切り離され、代理母に会うことすらなしに、自分の子どもを妊娠して
もらうことが可能になった」[前掲書:113]
このことに関して、色々と問題が指摘されているが、今回のアリサ・リュウのことから考えてみようと思う。
これからは、独身であったり、同性婚であった場合でも、お金さえ有れば自分が望む子どもを手に入れることができるようになった。
競馬の世界では優秀な種馬の精子が高額で売買されていることがよく知られているが、同じことが人にも行われると言うことだ。
近年は胚移植の技術も進んでいるので、望む胚を購入して代理出産してもらったら、簡単に望ましい子どもを手に入れることができる。
これは優性思想に関わる重要な問題となる。
今回、代理出産の女性が金メダルを取って、その価値が高まったらそれに倣う人も多く出てくる可能性がある。
特にスポーツ選手は遺伝的な資質に大きく左右され、それが高額を収入と結びつく。
かといって、人工授精で生まれた選手の出場を認めないことも問題だろう。
人類が自己家畜化(self domestication)したがゆえの歴史的な宿命なのかもしれない。
ウクライナの代理出産ことを含めて行きすぎた資本主義と経済格差がこういう問題を大きくしているように思う。
*1 アリサ・リュウ フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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