アメリカとイスラエルは今度のイラクへの奇襲攻撃で制空権を握りつつあるという。
それは弾道ミサイルやドローンへの対応であって、携帯式防空ミサイルシステムへの対応がどうなっているか気になった。
そこで調べたら「イラン、ロシアと秘密取引 携帯式ミサイル調達―英紙報道」という今年2月26日付けの記事があった。
それによれば、
イランは2027~29年に携帯式対空ミサイルシステム500基、ミサイル2500発を購入する。少数は早期に引き渡される可能性があるとしている。
ということで、来年の予定だった。
そこで考えられるのは、それが整う前にアメリカとイスラエルが攻撃した可能性があるということだ。
ドローンばかり話題になっているが、ウクライナ戦争でも携帯式対空ミサイルシステムや戦車に用いるジャベリン(携帯式多目的ミサイル)は非常に役に立っている。
もし、イランがある程度現在で携帯式対空ミサイルを保有していたり、ロシアが今後秘密裏に輸送できれば戦争は泥沼になるだろう。
おそらくそうならないように今回の攻撃が始まったのだろうと思うが、万一、イラン独自で地対空・地対地の携帯式ミサイルを開発していたら、話は違ってくるだろう。
また、直接ロシアから輸入しなくても、製造ライセンスと製造方法を手に入れれば済むのだ。
イランの工業開発力に関して、エマニュエル・トッド*1は次のように述べている。
私は『西洋の敗北』で、ウクライナ戦争でのロシアの勝因と米国の敗因をエンジニアの数に求めましたが、イランは膨大な数のエンジニアを輩出しています。米国で博士号を取る留学生でエンジニア分野を選ぶ割合がイラン人は突出して高い(六六%、中国三五%、インド三九%)。
昨晩会ったイラン大使も、エンジニアの育成は、歴代の政権によって計画・実行されてきたものだと強調していました。実際、イランでは革命後に大学が飛躍的に発展しています[E,トッド2025:206]。
確かに実戦経験の豊富なアメリカとイスラエルは奇襲攻撃では大成功を納めただろうが、空爆だけで無条件降伏したのは原爆を落とされた日本だけだ。
核兵器を用いずにトランプの要求する無条件降伏などあり得ないだろう。
ホルムズ海峡の安全を確保できなければ、世界中が大混乱するだろうし、確保できてもイランが無条件降伏するとは限らない。
そうすると、地上戦をやらざるを得ず、時間がかかっているうちに、海上ドローンや携帯式ミサイルを開発製造していき、泥沼になっていくだろう。
そもそも、ハメネイ師が遺言で徹底抗戦を指示している。
太平洋戦争のときの日本のように天皇の聖断で軍部を抑えることができない状態だ。
日本が薩長土肥によって天皇を担ぎ上げて、クーデターないし維新革命を起こしたのとイラン革命は似ているようにも思える。
その点では、トッドは次のように述べている。
米国を始めとする西洋が、今日のイランを見誤っているのは、一九七九年の「イラン革命」の意味をいまだに理解できていないことに一番の原因があります。
とくに米国にとっては、この時起きた米国大使館人質事件がトラウマとなり、冷静な理解を妨げていますが、革命によって誕生した国家の正式名称は「イラン・イスラム共和国」。これは「民主化革命」だったのです。その民主的、平等主義的な性格から、イラン革命は、フランス革命やロシア革命のイトコと言っていい[E,トッド2025:203]。
日本の場合はプロイセンに習って、帝政を敷いたので共和制では無いのだが、それは建前上で、実権は薩長を中心とした藩閥が軍部を握っていた。
日本でも戦前では男子普通選挙が行われていたが、治安維持法によって反政府への取り締まりは行われていた。
特に特別高等警察による拷問による弾圧はよく知られており、これまでのイランの政治犯への弾圧と大きく変わりは無い。
また、中国の天安門事件や香港への弾圧を考えれば、イランが特別に民衆を弾圧をしているとはいえない。
イランでは国軍に独立して革命防衛隊が対外的な戦闘の主力となっているようだが、これも戦前の日本の関東軍を彷彿とさせるし、海軍と陸軍の対立とも似ている。
おそらく、日本も原爆の投下が無ければ、陸軍を中心とした本土決戦が行われて、ベトナム戦争のようになっていたかもしれない。
これから行われようとしているイランでの本土決戦を避けて停戦すべきだと思うが、阻止できなければ日本が戦前に行おうとした本土決戦の実現となるかもしれない。
*1 エマニュエル・トッド 2025『西洋の敗北と日本の選択』文藝春秋[E,トッド2025]
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