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2025年10月10日金曜日

ドーパミンから見た社会④~日本とアメリカの比較

 もう、このドーパミンのテーマも4回目だ。

 『もっと!―愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』   ダニエル・Z・リーハーマン、マイケル・E・ロング 梅田智世訳 2020(2018) 合同出版 (以降D・Z・リーハーマン&M・E・ロング2020(2018)]と記す。)

を相変わらずいまだに読み続けているが、やはりアメリカの記述は重要に思う。

アメリカはドーパミン活性の高い移民が形づくつている国という。

そして、移民の非常に少ないのが日本として対照的に上げられている。

移民の問題は単に、現在移民を受け入れているかどうかだけで、その国の人々構成を考えるのは間違いだと思う。

日本は現在は移民という形でのあまり受け入れはしていないが、かつて近隣諸国を植民地にしてそこからの住民の流入が多かった。

また、北海道には先住民のアイヌが住んでいたし、琉球王国はかつての独立国で言語の上でも遺伝的な上でも違いも見いだせる。

かつての琉球王国から流入は現在でも続いているし、在日朝鮮韓国の人々は独自の文化も維持している。

そして、日本は他にあまり例を見ないような、有史以前からの遺伝子が温存された多様な形質を保っている国でもある。

日本の政治家は単一民族と嘯く人もいるが、多様性という見方からすれば、アメリカほどではないにしろ、けっして少ない方ではない。


移民の多いアメリカにノーベル賞が多く、起業家も多いというのは、優秀な移民がアメリカを舞台として活躍しているからだという。

ノーベル賞は「人類に対して大きな貢献をした人物」に与えられるとされるが、そうなると生活のために努力しているレベルでは貰えないのは当然だ。

要するにアメリカのように経済発展をしていて、基礎研究につぎ込む時間と資金がある国でなければ困難だ。

起業家に関しても先端技術と絡んでいるので、研究への取り組みと大きく絡んでいるが、低賃金の国やまだ未開拓の国は起業はしやすいだろう。

アメリカは最先端の分野の起業は多いようだが、鉄鋼などの製造業では古いまま低迷している。

日本はそもそも最先端ではアメリカからの締め付けが強いので、従来の製造業での発展をするしかない。

ということは、ドーパミンの高さが大きい影響を持って強力な力を持っているのは、移民だけのではないと考えるべきだろう。


ドーパミンと関わるものでアメリカを特徴付けているのは、私はこの書ではあまり取り上げられていないが、世界一の軍事力がその一つだろうと思う。

少ない中でが軍事力に関しての指摘は次のようにある。

ドーパミン活性の違いは、別の設問でも現れている。アメリカの回答者には、国家の目標達成手段としての軍事力の使用―まさに変化の強制的行使―を容認する人が多く、国連の許可を得る必要があると答えた人は少なかった。D・Z・リーハーマン&M・E・ロング2020(2018):280]

今のトランプ大統領がその代表とも言えるかもしれないが、軍事力を背景とした他国への圧力を行使してノーベル平和賞を求めている。

そもそもアメリカは核兵器を民間人にも用いて虐殺行為を行いながら、なんら反省もなく正当化し、より恐怖を与える兵器を開発して覇権を握っている国である。

日本はかつては軍国主義の国と言われたが、アメリカに敗れて以来その従属国となり、自衛以外の軍事力は封印されている。

日本は確かに軍事力の面で現在はドーパミンは活性化させていないと思われるが、企業戦士という言葉が示しているように、経済力への取り組みはかなりのものである。

日本では長時間労働が問題となっているのに、自民党総裁は「働いて 働いて 働いて」を公言して美徳のように言っている。

日本人は過労死や過労自殺をするくらい、ドーパミンを活性化させて働いてきた反省もみられない。

アメリカ人の軍事力は日本人の経済力と考えて良いと思う。


そして、もう一つ重要なのは意外に思うかもしれないが、宗教である。

「(アメリカは)人生において宗教を重視する傾向が強く、五〇%がきわめて重要だと回答した。欧州では、きわめて重要と答えた人は半分未満で、スペインでは二二%、ドイツでは二一%、イギリスでは一七%、フランスでは一三%だった。[ibid:280]」

なぜ、宗教とドーパミンが関連しているかというと

「そして宗教家なら、人知を超越した存在こそが人間の根幹だと言うかもしれない。それはつまり、実体のある現実を見下ろす存在だ。宗教家にとって、人間のもっとも重要な要素は、空間と時間を超えて存在する不滅の魂だ。魂はその姿を見ることも、音を聞くことも、においを嗅ぐことも、味わうことも、触れることもできない。ゆえに、想像のなかでしか出会えない。それはまさに、ドーパミンだ。[ibid:282]

これもトランプ大統領がキリスト教福音派と強い関係を持っていることからも分かるだろう。

よく言われている話だが、日本ではダーウィンの進化論を否定する人はいないだろうが、アメリカではヒトを神が創造したものとして否定する人も少なからずいるという。


宗教に関しては政教分離は建前上は守られているが、現在高市早苗総裁誕生で話題となっている靖国神社の問題がある。

靖国神社は英霊という不滅の魂を得ることで、国家のために戦死できるようにする宗教である。

因みに私の母方の太平洋戦争で戦死した祖父もこの神社に祀られているが、東シナ海の海の底に眠っていると思うで一度も参拝したことは無い。

また、自民党と統一教会、公明党と創価学会の関係からも、政治と宗教は大きく関係していることが分かる。

確かに一般の日本人は教理による宗教への信仰はあまり見られないと思うが、古来からのアニミズム、シャーマニズムなどの系統をひく信仰が形を変えて続いている。

その一つがかつて問題となった霊感商法だろうし、パワースポットブームもそうだろう。

神社神道も慣習行事という形で根付いているし、仏教も葬式には依然欠かせない。

そして、日本のアニメは宗教に代わる想像の世界でドーパミンと関わりがあるように思う。

アメリカはキリスト教の絶対的な崇拝が基本であり、日本は多神教的な多様性に満ちた信仰が維持されている違いがある。


将来におけるドーパミン活性化社会である両国の大きな違いは人口問題だ。

「娯楽の形があまりにも多く、教育に割く年月があまりにも長く、仕事に費やす時間があまりにも長いとなると、何かをあきらめなければならない。その何かとは、家庭だ。米国勢調査局によれば、一九七六年から二〇一二年のあいだに、子どもを持たない米国人女性の数はおよそ二倍に増加した。『ニューヨーク・タイムズ』の報道によれば、二〇一五年には第一回「ノットマム・サミット」が開催され、みずからの選択や境遇を理由に子どもを持たない女性たちが世界中から集まったという。[ibid:293

アメリカも日本も女性が子どもを産む数は減少しているが、アメリカが日本のように人口減少にならないのは移民のお陰なのだという。
日本は今後人口減少で活力を失っていくだろうが、アメリカはその問題は回避できている。
ただし、現在トランプ大統領が不法移民排除に苦慮しているように、都合の良い移民ばかりが来てくれるわけではない。
多くの移民によって政治的分断が起こり、治安の問題も深刻化している。
日本が労働者不足でも移民を受け入れるのを拒んでいるのも、アメリカの現状を見ているからだろう。
そういうことから考えるとドーパミンの活性化に頼る両国の未来は決して明るいものではないように思う。


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