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2025年10月12日日曜日

奄美のミキ~米麹代わりの生サツマイモおろし

 秋祭りのあるこの季節は、子どもの頃には必ず母が甘酒を作ってくれた。

今のように保温する電気器具も無く、電気炊飯器も保温機能が付いていなかった。

だからご飯を木製のおひつに移して、米麹を入れてしかり混ぜるのだが、私はその仕事を任されて、子どもとしてはしんどい作業だった。

そのおひつは毛布や布団にくるんで、できれば電気コタツのそばで温めておく。

数日するとあの甘酒独特のいい香りがして、それを鍋で炊いて飲ませて貰った。

しばらくすると甘酒も酸っぱくなって、不味くなってしまったが、子どもの頃にはおやつなどあまりなかったので、滅多にない美味しいおやつであった。


最近は発酵機能が付いた電気製品が多くあるが、今私が主に使っているのはソイリッチだ。

素材をスープ機能でペースト状にして、乾燥米麹を加えて発酵機能でしばらく置いておくと美味しい甘酒が簡単にできるからだ。

今まで甘酒にした材料は、白米、玄米、大豆、小豆、精白もち麦、ダイシモチ麦、ジャガイモ、コウリャン(ソルガム)、そしてサツマイモだ。

ところが、サツマイモは米麹を用いなくても甘酒風の乳酸飲料ができることを初めて知った。


面白いことに奄美でも八月の行事には本土の甘酒に似たミキが作られて飲まれていた。

実は奄美の与路島に村落調査で通っていた頃に、神人行事などでミシャキ(ミキ)が用いられているし、八月行事でも家庭で作っている人もいた。

本土のような清酒なら酔えるので飲んでも良いと持ったが、アルコール分はなさそうなので、あえて飲ませて貰わなかった。

今は米とサツマイモや砂糖を用いて作るもので、古くは噛み酒であったという。

甘酒のように米麹は使わないで発酵させるので乳酸飲料に近いが、最近は健康食品としてペットボトルや紙パックなどで売られている。

奄美大島伝統発酵食品『ミキ』によれば、生のサツマイモ自体に消化酵素β−アミラーゼがあるのでデンプンは糖に変えてくれるので、米麹は必要ないのだ。


唾液のアミラーゼを用いて作っていたのを、生サツマイモおろしで代用させたということだろう。
ただ、奄美には黒糖があったので、アルコールを造るのには米麹は必要なかった。
酒税の低い焼酎にするために米麹を使って、それが風味をよくしているという。
また、味噌などにも「なり麹」が用いられて、米麹は必要なかった。
元々は奄美も本土も米を用いた発酵飲料を祭りなどに用いていたのだろう。
本土では神事では甘酒、どぶろく、清酒が使われるようになった。
奄美ではミキが神事や行事に使われ、宴席で飲む焼酎とは区別してきたということだろう。
奄美のミキの面白いところは、本土のようにアルコール発酵させたどぶろくにはせずに甘酒とも違う乳酸飲料として健康食品にしたことだ。
そこが同じ焼酎文化を持つ九州とも違うところだと思う。

私もためしに作ってみたが、ダイシモチ麦のお粥に生のサツマイモのすりおろしの代わりにサツマイモジュースをソイリッチで作って加えてみた。
温度は人肌くらいにして、シャトルシェフで保温しておいた。
まだ、1日ほどしか経っていないが、確かに微かな甘みと酸味が感じられる。
砂糖を加えると確かに飲みやすくなる。
米麹を使った甘酒ほどには糖質がなくて、牛乳ヨーグルトと比べても栄養価としても引けをとらないという。
甘酒というより穀物ヨーグルト(乳酸発酵飲料)として、飲むのも良いかもしれない。



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