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2026年9月18日金曜日

イスラーム理解その1~中東の地政学的地殻変動

 先日、アメリカでの9.11同時多発テロの25周年の追悼式の模様が、多くのテレビ局で放映されていた。

その式典で初めて就任したニューヨーク市のイスラム教徒のマムダニ市長の参加を巡り、一部の遺族が反発する社会などの対立も表面化したことが報じられている。

一部の遺族や元市長らから反対の声や署名活動(10万筆超)が起きるなど、テロ後の社会的分断やイスラム嫌悪(イスラムフォビア)の根深さも浮き彫りなったともいう。

そもそも、テロ事件の起こったニューヨークでイスラム教徒の市長が誕生すること自体に違和感を持っていたが、それだけニューヨークは生活苦の人が多かったということらしい。

9.11同時多発テロ以降、アメリカは「対テロ戦争」として、アフガニスタン、イラクと戦争を行い、その両国ともまともに統治できず、撤退してしまった。

そして、挙げ句の果てにイスラム教徒を市長としてニューヨークは求めざるを得ない状態になったと言うことだろう。

その一方でアメリカは現在はイスラム原理主義の国家イランと戦争を継続している。

こういう状態を知って、いったいイスラムとは何なのだろうと思うようになった。


実は私は大学院にいる時には、イスラムを研究している人は傍に何人かいて、その研究発表も聞いていた。

しかし、あまり興味が持てずに、高校の教科書程度でしか知識を持ち合わせていなかった。

最初にもっと知りたいと思ったのは、ハムダなおこ『アラブに自殺、イジメ、老後不安はない―ムスリムにならう幸福の見つけ方』(2021 国書刊行会)を知ってからだ。

ムスリムが人同志の関係を大切にしていることがよく伝わってくる。

今回はもっと深く知りたいと思い、次の二冊の本を読んでいる。

青木健太 笠井亮平 中東調査会編 2025 『中東ユーラシアから世界を読む―連結する地域と秩序再編』 岩波書店: [青木健太その他 2025]

 黒木英充・後藤絵美編 2023 『イスラーム信頼学へのいざない』  東京大学出版会: [黒木英充その他 2023]

これからしっかりと読んでいこうと思うが、現在読んだ中で気になることを挙げてみようと思う。

今回は次の論攷を取り上げてみる


 [青木健太その他 2025]の「第1章 イスラエルによる武力紛争とアメリカの「取引外交」―二〇二四年以降の中東における地政学的地殻変動」 溝渕正季    [溝渕正季2025]

はじめに

1 流動化する地域秩序(二〇二三年一〇月~二〇二四年一二月)

(1)「アクサーの大洪水」作戦とその余波

(2)戦線の拡大

(3)シリア・アサド政権の崩壊

2 加速する第二次トランプ政権の「取引外交」(二〇二五年一月~)

(1)トランプ政権の「取引外交」

(2)イスラエル・イランに対する米国の対応

(3)親密さを深める米図・ペルシャ湾岸諸国関係

おわりに

●<コラム〉 米国・イスラエル間の「特別すぎる関係」


目次から内容がだいたい分かると思うし、是非手にとって読ん欲しいので詳細は避けるが、結論としては


中東においては、こうした法や理念のみならず、そもそも現代国際政治の根幹である国家主権といった規範すら欠如している[溝渕正季2025:45]


ということだ、そして、溝渕氏の分析で興味深かったのはそのコラムにあった


多くの米国人がイスラエルに広範な文化的親近感を感じていることも、福音派の宗教的信念を強化している。多くの米国人は幼い頃から聖書の物語に親しんでいるが、旧約聖書に載るユダヤ民族の物語は、「開拓」、「国家建設」、「明白なる運命」といった米国の物語と強く共鳴している。こうした歴史・文化的背景が、イスラエルを「運命共同体」とみなす意識を形成してきた[溝渕正季2025:49]。


つまり、アメリカの福音派の信念はイスラエルの物語に共鳴していることが重要であるということであり、ということはアメリカ先住民に対する姿勢とも同じと解釈できる。

アメリカの開拓者はアメリカ先住民を駆逐したように、イスラエルのユダヤ民族は先住民のパレスティナ人を駆逐してもなんら不思議ではないということだ。

私はかつてイスラムの文明を築いてきた人たちをそういう感覚で捉えることに非常に違和感を感じている。

このことは読み始めた[黒木英充その他 2023]に述べられているイスラム独自の文化にヒントがあるように思う。

だから、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の共通点と相違点を今後しっかりと考えていかねばならないだろう。


そして、現実的に「イスラエル・ロビー」がアメリカの政治を左右しているという。


イスラエルを批判的に扱う候補者は予備選で敗退する傾向が強まり、超党派での親イスラエル姿勢が定着している。要するに、六月の空爆は、場当たり的な危機対応というよりは、米国内の宗教・文化・ロビー政治・安全保障認識などが相互強化しあう「特別な関係」の帰結である。ガザの人道危機が深まっても、そうした構造は容易に変化し得ないのである[前掲書]。


アメリカの政治は金で買えると言い続けられてきたが、トランプの取引外交はその極みである。

(バイデン前政権のように)「自由」や「人権」などのリベラルな理念を前面に押し出すような政権より与しやすい相手という[前掲書:43]

アラブの湾岸諸国は言うに及ばず、イスラエルはアメリカ在住のユダヤ教徒によってアメリカのトランプを金で動かすことが出来るということだ。


しかし、冒頭でニューヨーク市長がイスラム教徒であることに触れたが、アメリカの貧困層はそれと逆の方向に流れている。

マムダニ市長は民主主義を通して社会主義を実現しようとする政治思想「民主社会主義」を掲げていて必ずしもイスラム教の教義等とは関係はない。

イスラム教支持者が現在のアメリカの国家中枢には入り込んではいないようだ

それは、アメリカの世界金融支配にとって、イスラム教の「ハワーラ」という貸し借り相殺を発展させた送金システム*1とは相容れぬものだからだと思う。

奇しくもこれはハイジャック実行犯たちがハワーラを使って資金を動かしていたといわれている9.11同時多発テロとも関連してくるだろう。

こう考えると金融と宗教、そして石油貿易が絡んだ世界戦争でありアメリカの内戦とも思えてくる。



*1「序章 イスラームから考える「つながりづくり」と「信頼」―今後の世界を見通す鍵として 黒木英充」[黒木英充その他 2023]








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