ノンバンクカードローン会社のアイフルのCMで女将さん役の大地真央は「そこに愛はあるんか」と問い続ける。
単にアイフルのアイと、愛をかけただけらしいのだが、カードローンが愛と無縁と思わないようにCMの場面場面で茶化しながら結びつけているいるのが面白い。
本来、愛している人から利子など取らない筈なのに、愛を標榜するのはおかしいのは明らかだ。
それとちがってコンピューターの生成AIやロボットに愛(感情)があるかどうかは簡単に考えられなくて、ネットで検索したら色んな意見が書かれて有って興味深い。
これは人間の脳の身体外での道具として発達したコンピューターやロボットに「命」を認めるかどうかの問題ともなる。
アントニオ・ダマシオ 高橋洋訳 『進化の意外な順序』 白揚社 2019(2018 THE STRANGE ORDER OF THINGS 以降[アントニオ・ダマシオ2019(2018)]) によると、
感情とはホメオスタシスの心的な表現であり、感情の庇護のもとで作用するホメオスタシスは、初期の生物を、身体と神経系の並外れた協調関係へと導く機能的な糸と見なすことができる。この協調関係は意識の出現をもたらし、かくして生まれた感じる心は、人間性のもっとも顕著な現われである文化や文明をもたらした。このように感情は本書の中心的なテーマをなすが、その力はホメオスタシスに由来するのである[アントニオ・ダマシオ2019(2018):15]。
ホメオスタシスは恒常性と訳されるが、つまり生命そのものに関わる重要な概念だ。
それは生物が生体の各組織に必要な水分、栄養素、酸素を確保することで、エネルギー資源のエネルギーへの変換を可能にする化学的プロセスを自動的に調節することをいう[前掲書:57-58]。
彼の理論に沿えばコンピューターやロボットに感情を認めることは「命」を認めることにもなるが、明らかにホメオスタシスの条件を満たしていない。
逆に「命」を認めず感情を認めるとすれば、彼の理論とは別の理論で感情を説明する必要があるが、それについては別に考えねばならない。
まずはダマシオ氏の理論にそって考えるが、この問題を別の著書*1で次のように述べている。
今こそ、こうした事実を認識し、AIやロボット工学の新たな章を切り開くときだ。「ホメオスタシス由来の感情」に従って機能する機械を開発できることは今や明白で、そのために必要なのは、機能維持のために調節や調整を必要とする〝身体″をロボットに与えることだろう。つまり、逆説的とも言えるが、ロボット工学の世界であまりにも高く評価されている堅牢性に、一定の脆弱性を付け加えることこそが必要なのだ。[アントニオ・ダマシオ2022(2021):184]
彼に言わせれば、まだ感情を持つに至っていなくて、「ホメオスタシス由来の感情」に従って機能する機械を将来持たせるべきということになる。
それを目指すかどうかは、軍事利用の問題も含めて徹底的に議論すべきだろうが、まだまだ命を認める段階では無いというのが生物学的な専門家の意見だろう。
ただ、命は単に生物学的に捉える問題では無くて、人の生活に根ざした信仰や情愛の社会的、心理的な問題でもある。
日本人は何にでもタマシイが宿るというアニミズム的な信仰を持ち続けているので、自然の無生物や人工的な機械などにも命を見いだしたりする。
だから、すんなりとコンピューターに命と感情の存在を肯定できるように思う。
それは生物学的な意味とは違って、日常の生活でそう接っすることができるということだ。
もう既に、愛車に対してのそういう感情を忌野清志郎は「雨上がりの夜空に」で歌っている。
これは愛車に霊的なものを認めているわけでは無くて、まるで恋人のように愛情を感じることを歌っている。
ただし、以前は正月には愛車に注連飾りをしたりしたし、今でも新車を神社でお祓いを受けたりするので、霊的なものとの関係が全くないわけでは無い。
有名はところではロボット犬アイボに対する人気は強く、一度は生産を取りやめたのに再開することが決まっているそうだ。
場合によっては生きている犬よりも、愛情を注ぎ込むことができるのがアイボかもしれない。
まるでそこに「命」があるかのように、アイボは扱われているように思う。
問題はあたかも生成AIが生きている人物のように恋愛対象になってしまったり、相談相手になってしまって、場合によって自殺までしてしまう人がいることだ。
ここまで行くと、日本でもアニミズム・シャーマニズム信仰で祟りや呪いがあったのと同じレベルになってしまう。
かつて科学や医学が発達していなかった時代は、信仰の力が大きな力をもっていて、場合によって病気や死と深く関わっていた。
今の時代は科学と医学が発達しているのだから、生物学的な見地にも立って生成AIやロボットにだけに依存してしまわないことが大切だろう。
そして、愛(感情)は人間の最も恐ろしい側面ももっている。
愛国心は戦争を生み、恋愛は殺人に結びつくこともある。
特に戦争はその抑止を考えないと人類破滅に結びつくと思われる。
だから、ダマシオ教授のような明るい未来だけを私は予測はしない。
*1 『ダマシオ教授の教養としての「意識」―機械が到達できない最後の人間性』 アントニオ・ダマシオ 千葉敏生訳 2022 ダイヤモンド社:(2021 FEELING AND KNOWING Making Minds Conscious)
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