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2015年6月27日土曜日

おまえが 教師か!?

おまえが 教師か!?
私が教育実習のために、母校に戻ったときに言われた言葉である。
言ったのは、生徒だった頃の生徒指導の先生である。
言われても仕方ない。
私は高校生時代は、勉強もせずにバンドに狂っていた所謂不良であった。
高校では喧嘩などはしなかったし、教師に反抗的な態度をとっていたわけではない。
単に仲間と好き勝手して、成績も悪かっただけである。
家でも説教をする父親と常にぶつかっていた。

当時、教員免許は教師になろうと思ってとったのでは無い。
文学部の人類学科のコースで教師になっているのは、英語とか国語の免許を特別にとった者が殆どだった。
社会の免許を取っても、教師になれる確率は低いが、万一のためにもっておこうと思った。
というのも当時は大学院へ行こうと思っていたので、研究者になれなかったら教師しか無いと思ったからである。
その万一の備えが良かったのか悪かったのか分からない。
というのも、大学院での同期のもう一人は教員免許を持っておらず、研究者になるしか無く、そしてなった。
もし、もっていなかったら研究者になる道にしがみついていたかもしれない。
研究者への道を諦められたのは、故郷に戻って教師になる逃げ道があったからである。

結局、自分は研究を続けたいという思いを、最後まで断ち切れず、中途半端な教師になってしまった。
ただ、教師は大学の教員ほどでは無くても、自分の専門を追求すべきであるとは思っている。
その姿を生徒に見せることも、教師としての一つの指導法でもあると思っている。
だから、自分が追求していることは何でも、生徒に伝えた。
残念ながら、今の学校は組織体制を重視するので、自分のような職人タイプの人間は上手く馴染めず、職場を転々とした。

今年は、教育実習生を引き受けることになった、
担任としてクラスに受け入れた実習生を除いて、二人目である。
特別支援学校では、視障害児教育の教員免許を持っていなかったので、実習生は指導できなかった。
三週間という実習期間は、ばたばたする内に過ぎ去った。
自分が実習生の頃は、最後は教師と飲んだ。
というのも、実習費用を払ったので、そのお金で飲もうと、教師が奢ってくれた。
今は、実習費用も受け取らず、飲むことはおろか食事もすることは無い。
そのかわり、教生の実習ノートには自分の思いをしっかり書いたつもりである。
実習生が教師になるかどうかは分からないが、残り少ない教員生活には思い出となった。

その教育実習が終わってしばらくして、職員室でどこか見覚えのある他校の教師を見かけた。
その教師も、やはり見覚えがあるという表情でこちらを見ていた。
そのうちその教師から声をかけられた。
「石原先生ですね?」
分からずにいると、以前勤めていたところで教育実習を指導した生徒だった。
彼は本校で行われていた会議に出席していて、他校で進路指導部長をしていた。
その時は名前も思い出せなかったが、当時のことは私もしっかり憶えていた。
まさか、これまで唯一指導した実習生が教師になっているとは思ってもみなかった。
正直、指導したときはなれるとは思っていなかった。
後で彼を知った人に聞いたら、何年も講師経験をして採用されたらしい。
教え子のなかには何人もの教師はいるが、実習生は初めてである。
これも教育実習が取り持つ縁なのかなと思った。

そういえば、「おまえが教師か!?」といわれた先生にはその後一度も会っていない。
会ったら「ちっとは教師らしくなったでしょうと」言いたいものだが・・・