今回のアメリカ・イスラエルによるイランへのミサイル攻撃で、イランの防空システムの脆弱性が明らかになった。
どうも、ロシア製、中国製、自国製の混在で指揮統制や通信ネットワークの統合が不十分だった可能性が指摘されているようだ。
そんな中で、イランが中国から携行式防空ミサイル発射機を最大400基調達する契約を結び、数週間以内に初回分の引き渡しを受ける見通しが報じられている。
これで低空飛行する戦闘機、ヘリコプター、ドローンへの攻撃が可能で、アメリカとイスラエルはミサイル以外では安易にイラン攻撃が出来なくなりそうだ。
これで、アメリカが手を引けば朝鮮、ベトナムから続く大失態とも受け止められそうだ。
そんな中で、米中首脳会談が行われ、トランプ大統領は習近平国家主席を自ら空港まで出迎えるほどの歓待ぶりに、アメリカの中国への配慮を知ることが出来た。
この米中関係に関しては、Yahooニュースで呉心伯氏の次の見出しで見解を報道している
「5年後にはアメリカ上回る」 習近平氏の外交ブレーンが語る米中首脳会談の狙い 日本には強く警告「米中対立 期待すべきではない」
この記事に関しては多くのコメントが寄せられているが、日本は高市総理の対中政策が正しいのか誤りなのかを考える一つの材料になるだろう。
トランプ大統領は米中首脳会談の前に高市総理と会談する配慮を示したが、その内容は明らかではない。
私はトランプ大統領は日本も中国も上手く利用としているだけで、東アジアでのイニシャティブを軍事力をもって維持しようとする意図は無いと思う。
米中首脳会談では第二次世界大戦では同盟国だったとトランプは述べ、習近平もファシズムにともに戦ったと述べたという。
朝鮮戦争では戦火を交えた関係よりも、中華民国時代の関係を持ち出すことは、両氏とも台湾を含んだ中国という姿勢に思える。
すでに、北朝鮮に対しても米韓の軍事演習を短縮して配慮しており、相手の国が民主的な国かどうとか資本主義かどうかは、もう政策の決定事項ではないようだ。
とにかく、我々は中国がどういう意図をもって外交政策をして、その実力はいかなるものかを知っておかねばならないと思う。
相変わらず北朝鮮からの弾道ミサイル実験で日本では大騒ぎしているが、今起こっている戦争では核を用いない限り、迎撃も可能でそれほどの脅威にはなっていない。
温暖化による災害や交通事故で亡くなっている人の数の方が、弾道ミサイルで亡くなっている人の数よりも多いだろう。
日本人は流血戦争の総力戦を恐れているかもしれないが、それこそ核抑止力によってそれが出来ない状態のようだ。
台湾有事に関しても現在行われている戦争が参考になるので、中国も簡単に事を起こさないように思える。
そもそもアメリカを抱き込んでしまえば、台湾は戦争しなくても手懐けると思っているようにさえみえる。
それよりも、経済戦略による貿易戦争の方が、重大な意味を持ってきている。
その参考になるのが三船恵美「国際秩序再編に挑戦する中国と中東ユーラシア」[三船恵美2025]*1である。
その目次は次のようになる。
はじめに
1 既存の国際秩序に挑戦する中国
(1)「新時代の中国の特色ある大国外交」による挑戦 (2)中国の大国外交と中東
(3)多極化の模索と対中東外交
2 ユーラシアの連結性と中東
(1)陸と海から見る中東 (2)「人類運命共同体」構想の手段としての「一帯一路」
(3)中東に対する「1+2+3」協力枠組み
3 中東ユーラシアの秩序再編から見る中国との関係
(1)UAE (2)サウジアラビア (3)オマーン (4)イラン
おわりに
この論攷で述べられていることの要点を上げてみると、まずアメリカに対しては次のように述べている
「人類運命共同体」の構築へ向かう中国は、国連、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの多国間レジームを重視する姿勢を打ち出している。そこには、アメリカ一強の国際秩序に抵抗し、多極的な世界の形成を促進する意図がうかがえる[前掲書 52頁]。
そのために行おうとしているのが「大国外交」であり、それに関しては次のように述べている。
中国の大国外交とは、中共による一党独裁体制のもとで、欧米型のデモクラシーとは異なる「中国的民主【(7)】(minzhu)」の政治システムを非欧米諸国とお互いに擁護し合い、途上国としての既得権益を維持し、世界政治に影響力を及ぼす大国として振る舞う外交[前掲書 53頁]
つまり、欧米の民主主義とは一線を画す政治システムを、非欧米諸国と共有してその中心に位置しようとしている。
日本は非欧米諸国なのかどうかが問題となるが、それが微妙な立場だと言うことが分かるが、それは次のような中国の歴史的背景や現状認識と関わっている。
この背景には、「屈辱の歴史」の経験や、冷戦後にアメリカ主導で築かれた国際秩序が中国の核心的利益を侵害している、という中国の強い被害者意識がある(中略)アメリカが経済覇権を築いてきた要因の一つの、ペトロダラー・システムを崩す「脱ドル」を推進するには中東の主要産油国を引き込む必要があるという[前掲書:55頁]
日本は中国に「屈辱の歴史」を与えた国でもあるが、アメリカの経済覇権の恩恵と辛酸をなめてきた国でもある。
「脱ドル」を指向した時もあったが、すぐにアメリカに潰されてしまった。
この「大国外交」こそ日本が戦前に欧米支配に対抗して打ち出した「大東亜共栄圏」の、中東ユーラシア版と言えるのかもしれない。
ただ、日本がアメリカに宣戦布告したような愚を犯そうとはしていない。
三船恵美氏は次のように結んでいる。
中国は従来のアメリカの役割や優位性に取って代わろうとしているのではない。中国が描く中国主導の新たな中東ユーラシアの国際秩序観は、アメリカの優位性を排除したり弱体化させたりしようとするものである。しかし、中東ユーラシアの国際秩序が大きく揺れるなかで、中国には国際公共財としての安全保障を提供する力も意思もない。中国には中東ユーラシアで影響力と関心をもつ主要なアクターとして振る舞ってはいるが、その影響は限定的なものであることを、二〇二五年六月のイランとイスラエルの大規模衝突以降の国際関係は物語っている[前掲書:66-67頁]。
日本が日中戦争を続け、アメリカから石油を停められ「窮鼠猫を咬む」太平洋戦争で滅んだ歴史は、もし台湾有事が長期化したら同じ事の繰り返しになるだろう。
中国の実力を知っているアメリカもかつて日本を追い詰めたようなことはしないだろうし、中国も長期戦の可能性の高い台湾侵攻は行わないだろう。
そんな中で、台湾侵攻を材料に日本の軍備拡張を進め、中国と険悪な関係を作ってしまった高市総理は、信用を失ってしまった国連に活路を見いだそうとしている
彼女が単なる外交音痴なのか策士なのかはアメリカの中間選挙後に分かるだろう。
そして、その中間選挙に大きな影響を与えるのはアメリカがイランとの戦争で中東を中心とした石油が高騰したことである。
*1青木健太 笠井亮平 中東調査会編 2025 『中東ユーラシアから世界を読む―連結する地域と秩序再編』 岩波書店: [青木健太その他 2025]
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