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2020年3月31日火曜日

あの素晴らしい日々よもう一度

私は大学に入った時は研究者を目指すつもりなどなかった。
どちらかというとミュージシャンになりたかった。
しかし、村落調査のサークルに入って、その魅力にとりつかれてしまった。
そして、いつしか大学院へ行って研究を続けたいと思った。
当然、語学や専門は大して勉強していなかったので、ゼミの先生からは都立大学大学院に入るのは(卒業後)二~三年はかかると言われた。
それは、都立大の先輩の中でそういう人がいて、私の大学がその先輩の大学のレベルより低かったのでそう思われたようだ。
当時の都立大学大学院の先輩は、都立大からの進学はあまりなく、他の国公立や有名私学の出身者が殆どで、中には東大を出た人もいた。
そう言われた私は、学部を留年か卒業かは分からないが、大学院での必要な資金を稼いでいるうちに合格できるかもしれないくらいに思っていた。
ところが、現役で合格してしまい、親からの支援も全くなく、非常に貧しい生活を余儀なくされた。
私の兄弟は4人男兄弟で、弟も大学に進学したので、親には私を支援する余力は全くなかった。
その時のことは、以前に「人生を左右する奨学金」というタイトルで、くわしく書いている。
そして、今回の退職でその大学院時代におくった生活に逆戻りすることになった。

三年前に早期退職した時には、家内との約束した研究するための半年の期限が切れて、それ以降は常勤の仕事を始めた。
NPOの農業に始まって、閑谷学校の指導員、プールのインストラクター、定時制高校の常勤臨時講師、常勤臨時教諭と続いた。
プールのインストラクターは、非常勤であったが、それほど長くは勤めていない。
この4月からは、自分の希望で非常勤講師をすることになった。
常勤を求められたが、常勤の勤めはどうしても拘束時間が長くて、思うように研究が進まなかったからだ。
何としても、今年度中に出版までこぎ着けたかったので非常勤講師をお願いした。
当然そうなると、収入が大きく減るので、家計的には厳しくなる。
今回も家内には苦労をかけることになる。

家内には貧乏学生だった頃の話をする。
当然、「時代が違う」と一蹴される。
確かに、車も携帯電話も持たなかった当時と比べれば、生活費はかなり違う。
ただ、当時の東京近郊の暮らしは、結構生活費も高くついていた。
東京中野の風呂・便所なしの6畳一間の1kアパートで23,000円
新宿区の西落合の風呂なし2DKで37,000円
横浜緑区の長津田の風呂・便所有りの2DKで48.000円かかった。
現在は家のローンは払い終わっているので、固定資産税が家賃のようなものだが、月額に直せば一万円ほどだ。
電気代や水道代は当時とそう変わらないと思う。
大学院生時代は、通学費、授業料や本代もかかったのだから、結構経費はかかっている。
その分、今より食費や衣料費などを削っていたように思う。
特に東京中野での暮らしは貧しかったのだが、家庭教師をし始めてからは、美味しいケーキにありつけていた。

学部生の頃も、院生のころも貧しい生活をしていたのに、惨めに思ったことは無い。
周りの仲間もみんな貧しかったからだ。
そして、若さ故に将来にもそんなに不安を感じてはいなかった。
それは支えてくれている人がいたことと、第一線の研究をするのだという意欲があったからだと思う。
それを同時に失った時に、とてつもない不安に襲われた。
今は、研究機関に属してはいないけれど、第一線の研究をしようという意欲がある。
何よりも、幾分の蓄えと自分を支えてくれている家内や家族がいる。
大学院生の時のような気持ちを持つ条件がそろっているのである。
確かに昔のように大きな夢を描くことはできないが、生きる意味を見いだせるし、果たせなかった研究課題をやり遂げる目標がある。
それが地位、名誉、収入には結びつかないかもしれない。
豪華客船や列車の旅や豪華な料理を食べることもできないだろう。
そのかわり、心豊かで充実した日々が送れるように思える。

ポツンと一軒家に多くの人が魅力を感じるのは、単に人里を離れているからでは無い。
世間に惑わされずに、不便ながらも自分なりの世界で自由な生活をしていることに憧れるからだと思う。
何も人里離れて一軒家に住まなくても、どこにでもその気になればそういう生活は可能だと思う。
ある意味で自分にとって大学院時代の一時期が、東京圏の中のポツンと一軒家だったのかも知れない。
これから常勤の仕事から、非常勤の仕事に変わるのは、ポツンと一軒家暮らしになるのと似ているように思える。
それに付き合う家内には気の毒にも思うが、いずれその良さにも気づいてくれるのではないかと願っている・・・
貧しくても夢を抱いて、ずっとときめき続けていたあの素晴らしい日々よもう一度・・・












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