私が授業を担当していて、関西の難関私学に合格した生徒の多くは、模擬テストでは良い判定をもらっていなかった。
中でも、ずっとE判定だったY君や、かつては成績不良で問題となったO君の合格は快挙であった。クラスも別々のその二人が、先日そろって挨拶に来てくれた。
私に直接会って話がしたいと、1時間も私が戻ってくるのを待ってくれていた。
私はその時に、彼らが日本史をどのように勉強したかを聞いた。
O君は本格的に勉強を始めたのは去年の7月からだった。
彼の取り組みは側で見ていて知っていた。
塾にも通わずにひたすら学校で、教科書や資料を読んでノートにまとめたり、一問一答の問題をしていた。
私は時々、放課後教室で残って勉強している彼に、声かけとちょっとしたアドバイスをする程度だった
Y君はもともと日本史が好きで、模擬テストもそこそこ良い点数をとっていた。
しかし、他の科目はそれ程でもなかったので、模擬テストの判定は悪かった。
彼も塾には行かずに、ちょっとした通信テキストを使う程度だったという。
勉強方法は、分からない日本史の用語があると、家でスマホを使って、Wikipediaで調べたという。
彼は一問一答も持っていなかったので、受験前に貸してあげたが、それも役だったという。
彼も教科書中心の勉強をして、受験前に過去問をしっかりしたようだった。
Y君は受験前にはあまり学校に来なくなった。
名指しでは無いが、学年集会で教師から「学校に来ずに受験勉強をして受かった者はいない」という言葉を聞いて傷ついた。
私は彼を呼んで自分も学校に行かなかったこと、意地を出して見返してやれと発破を掛けた。
今回も彼はそのことに拘りを持っていたので、こう答えた。
「学校で一生懸命受験勉強して、合格した者もいれば不合格の者もいる。そして、学校でせずに合格した者もいれば不合格の者もいる」
「教師は学校に来て一生懸命勉強して合格した者だけを、どうしても立場上強調して宣伝したがる。それだけだ」
実際、あれだけ学校で一生懸命勉強していたのに、合格できていない生徒もいるのである。
私も正直、私が与えたプリント課題を一生懸命取り組んでくれて、難関私学に合格してくれた生徒は特別嬉しく思う。
ただ、教師が受験生の勉強を邪魔することがあることも知っている。
この奇跡を起こした二人に私が出来たのは、日本史に興味を持ってもらうことと、自分を信じて諦めずがんばることの力添えだけである。
というのも、自分の同級生の中で、学年で成績ビリの友達が、早稲田大学一筋に勉強して見事現役で合格したことを常々話してきたのである。
そして、私はプレゼンを使った授業だが、ノートすることはあまりない。
ただ、画像や映像は多いのと、もっぱら現代の社会に置き換えてたとえ話をする。
受験参考書や問題集も一様参考にはするが、学術的な本を読むことの方が多い。
細かい受験テクニックは殆ど出来ずにいた。
なにせ、過去4年間特別支援学校に勤めていて浦島太郎状態だった。
Y君は大学でどんな勉強したいかもう既に考えていたし、高校時代と同じクラブで頑張りたいという。
O君はこの半年受験勉強を遮二無二行ってきたせいか、今は何も考えていないという。
O君には「これで燃え尽きてしまわないように」と釘を刺した。
そして、二人には是非大学で色んな経験をして欲しいと話した。
彼ら以外にも、何人か合格の報告をしにわざわざ訪ねてくれた生徒がいた。
どの生徒も、私にとっては誇りであり、私のこれからの励みにもなる生徒である。
そして何よりも後輩にとって、良い目標になる生徒でもある。
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