久しぶりに風邪で仕事を休んだ。
前日、風邪ぎみのところ、夕方6時頃から一時間ほど、じっと駐車場係の立ち番をしていた。
ベンチコートを着て備えたつもりだったが、こういう時にはくアウターパンツをはいていなかった。
すでに、室内に戻った頃は熱が出て寒気がしていた。
帰宅する時、「明日は休むかも知れない」と言って職場を出た。
翌朝、回復せず熱を測ってみると37.5℃で、仕事を休んで医者に診てもらうことにした。
少し離れた医院に行くと、熱も38℃に上がっており、別室で待機させられた。
そこで、一時間以上横になって、診てもらうのを待った。
呼ばれてインフルエンザの検査をして、しばらく後結果を聞いた。
インフルエンザではなく、風邪であろうということだった。
薬をいっぱい出してもらい、隣の薬局で受け取って帰った。
午後からは、ベッドに横たわりながら、うとうととした。
不思議なもので、妙に気分が落ち着いて普段のように焦りが無い。
普段の休日や、休みを取った時は何かしなければと思うので、意外に落ち着かない。
寝ているしか無いと思うと、何年も忘れていた安らぎを感じた。
そして、まぶたに浮かんだのは、東京の西落合で過ごしたアパートの窓の景色だった。
西武新宿線の新井薬師駅の近くで、路地を入った安アパートだった。
2DKだけど、風呂は付いていなかった。
南の窓には手すりが着いてあって、そこに余ったご飯を干したりしていた。
すると、毎日のようにキジバトがやってきて、それをついばんだ。
近くには哲学堂があったので、そこに棲んでいたのかも知れない。
一度、餌をひっくり返して、慌てふためいて飛んで逃げた事があったので、ドテバトと名付けていた。
そのいつもドテバトがやってきていた、窓の風景が不思議にも思い出された。
私は学生時代、大学で2、大学院で3、の計5カ所のアパートを経験している。
それなりに窓際の風景があったのに、なぜこの時思い浮かんだのが西落合のアパートなのか分からない。
ただ、東京圏に3年暮らして、一番落ち着けていたのがこのアパートだったように思う。
家賃が安かった上、買い物するにも食事をするにも便利だったし、風呂屋も近くにあった。
何よりも、哲学堂がそばにあって、毎日のように散歩に出かけた。
鉄道のアクセスも良かったので、家庭教師のバイトにはとても便利だった。
大学時代の友達も遊びに来て、泊めてあげることができた。
一度などは、失恋した親友が夏休みにやってきて、二人で3日ほど飲み明かしたこともあった。
風邪で床について、長い間忘れていた安らぎと記憶を思い出せた。
おそらく毎日元気ではつらつと生活していたら、思い出すことはなかっただろう。
入院して病室で長く過ごすことも何度かあったが、病室は全て相部屋だったし、ゆっくりと落ち着けるものでもなかった。
それほど酷くも無い風邪の症状で、ゆっくりすることが心地よいという良い体験が出来た。
ただし、翌日からの仕事は、まだ症状の残る中、大変辛いものだった。
それでも、安らかに過ごす事の大切さを教えてくれたのは風邪だったように思う。
自分は知らず知らずにあくせく暮らす生活しか、出来ないようになっていたからだろう。
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