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2013年11月22日金曜日

おさつの効果

”英語はね!単語 単語 単語ですよ!”
これは高校時代に教わった英語の恩師の言葉である。
英語は大学受験の要として力が入れられ、単語テストを行うのが定番だ。
私も中学生から単語テストを受けてきたと思うが、低い点でペナルティーはなかったと思う。
今はペナルティーがないと、投げてしまう生徒がいるので、合格点をとらないと単語筆記のペナルティーがある。
本来は英語力や受験のための単語テストは、ペナルティーをしなくて済むためにがんばらせるものとなっている。
それでも残念ながら、生徒によっては投げてしまって、私の担任しているクラスは合格者が一桁だった。
しかも、学年で合格者の数が最低という事態に、一計を案じた。

「鼻面のニンジン作戦」ならぬ、サツマイモ作戦である。
これは以前から「全員合格したら、何か奢ってくれる?」という生徒の要望を汲んだ。
「全員合格したら、うちで採れたサツマイモ食わしてやる」と宣言した。
一番喜んだのはもちろん、女子生徒である。
「私は大学芋が良い!」と、ほとんど不合格だった生徒も叫ぶ。
当然私は無理だということは分かってはいたが、単語テストに楽しく望めれば良いと思っていた。

さすがに全員は無理だったが、宣言以降はこれまでと違って、合格者どっと増えた。
とりあえず学年最低の合格者数は脱することができた。
全員合格を諦めてしまっては元も子もないので、みんな努力したらそれなりのご褒美はしてあげると伏線もはった。
そして、家から持ってきた土のついたサツマイモを、黒板の上に掲げて「これを目標にがんばれ!」
と檄を飛ばし続けている。
ペナルティーを科すことよりも、目に見えるご褒美の目標の方が効果があったのである。
もちろん、こんなやり方は邪道だとは分かっているが、何か楽しみがないと勉強もつまらないことも確かである。

考えてみれば、私が英語を嫌いにならないで済んだのは、当時は英語の歌を歌うのが楽しかったからである。
ビートルズから始まり、色んなバンドの曲を歌詞カードをを片手に、レコードをかけて歌った。
生徒にも英語の歌を勧めているのだが、残念ながら今は流行っているのは日本の曲ばかりだ。
そのかわり日常的に英語があふれているのだが、生徒はカタカナ英語とアルファベット英語が結びつかない。
日本史の授業で、生糸を答えさせるのに、シルクロードというヒントを与えても答えられないのである。
当然、コットンとcottonも結びつかない。
これは漢字言葉を知っていても、中国語が分からないのと変わりがないのかもしれない。
何年間も英語を習い続けた日本人の多くは、英会話のできないカタカナ英語文化を育んだ。
それは、先人が中国語のできない漢字言葉文化を育んだのと大差ないのかもしれない。
違うのは漢字文化は中国人と筆談できるが、スペルが書けないカタカナ英語は意思疎通の道具にさえできないのである。
せいぜい、歌の歌詞に織り込んだり、商品に利用して親しむしかない。
一方、英語教師は”単語 単語 単語”と叫んで担任を単語テストに動員できる力が持てる。
これは英単語の持つ何よりも畏るべき力である。

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