私の住む村を流れる高田川には蛍がたくさんいて、今その真っ盛りである。
上郡でももっと山沿いの鞍居川では、源氏蛍がいて乱舞する姿がすばらしいという。
こちらは平家蛍で小ぶりではあるが、蘆の中で優しく光る姿には心が和む。
赤穂の塩田地帯に育った私には、引っ越してきて初めて味わう幻想的な景色であった。
毎年、この季節には一度は見に行くのであるが、たいていは一人でぶらりと出てみる。
自分の子どもが小さい頃は、見に連れてくると喜び、夏の風物詩を楽しんだ。
今は、今年もいることを確かめに行くのであり、風情を楽しむというわけでもない。
実はこの近くの川は、この冬場に河川改修をしていた。
ユンボーで河床を均していったので、蛍はいなくなると思った。
案の定、改修した箇所には蛍は殆どいなくなっていた。
幸いなことに、一部の区間だけだったので、残された所は却って多くいるように感じた。
このところ、千種川流域では水害が多く、本流では大規模に河川工事をしている。
2004年(平成16)の台風21号による水害では、この高田川も本流に合流する付近で浸水があった。
2009年(平成21)は台風9号による水害が、上流の佐用町を中心に広がったのはよく知られている。
50年に一度の水害と2004年の時は言われたが、地域は違うが、その5年後にはそれを上回る水害となった。
私の育った赤穂でも1974年(昭和49)に大水害に見まわれたが、赤穂の有年地区はそれから30年後の2004年の台風21号による大被害を受けた。
50年に一度の水害が50年も経たないうちに起こる。
「その水害は100年に一度というのか」と冗談にもならぬことを家内と言い合ったりする。
これだけ水害が多いと、河床を浚って備えねばならないことはよく分かる。
毎年、冬場には枯れた蘆を焼いて、ゴミもついでに燃やして綺麗にするが、土までは浚わない。
もともとは扇状地で氾濫するのは当たり前だったのだろうが、今は氾濫させるわけにはいかない。
予算が無くて、全面的に河川改修できなかったことが幸いして、蛍は残ったが、できれば今後は場所をとびとびに改修して欲しい。
高齢化で村の溝掃除も苦労するようになった今、自然を守る力を維持するのも難しくなっている。
台風で倒された木を放置して山は荒れ、ますます山肌は削られ、そしてその土が川に流れ込む。
里山や村の藪や河原は、本来手を加えて管理して維持するものである。
管理できなくなった竹林や大木は根こそぎ切られ、美しくさえずる鳥は来なくなった。
せめて、子どもや孫に蛍を見せてやれるように、知人に蛍を見においでと言えるように川を守りたい。
不便な田舎を大きくアピールできるのは、華やかな花火ではなくて、仄かで優しい蛍の瞬きなのだから。
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