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2025年5月21日水曜日

食われるヘビ

 先日、犬との散歩の途中の小川沿いの道でコウノトリがヘビをくわえているのに遭遇した。

我々に気づいたコウノトリは、少し飛んで田んぼの中で一生懸命飲み込んでいた。

長いクチバシで長いヘビを飲み込むのも大変そうで、何度も下から跳ね上げてやっと上を向いて飲み込んだ。

コウノトリにとってヘビは大切な食料である。

ちょうど、ヒナも誕生しているので吐き戻して与えねばならないのだが、このヘビは相当消化されていないとヒナの餌には無理だと思った。

ヘビはコウノトリだけで無く、トンビやカラスやイノシシなどの雑食系野生動物にとっても大事な食料となっているようだ。


ヘビのそういう弱い面はあまり語られることは無い。

「ヘビににらまれたカエル」のように強い方が強調される。

動物番組でもネズミや小鳥などの小動物や卵を襲う場面がよく出てくるが、ヘビ自体が食べられている場面はたまにしか出てこない。

アナコンダのような大蛇になれば、イノシシや人でさえも飲み込まれてしまうし、毒蛇は咬まれただけで死んでしまうこともある。

私は奄美に村落調査によく行っていた関係で、ハブに一番警戒して必ず調査には長い皮ブーツを履いていった。

当時でも、ハブに噛まれた人がいたが、ある人は咬まれた膝から下を切り落としていた。

その人を見ることだけで、ハブの恐怖を感じざるを得なかった。

ところが、そのハブも捕獲すると買い取ってくれるようになって、良い収入源になるので多く捕られていったようだ。

恐ろしい反面、実はサトウキビや農作物に被害を与えるネズミを捕ってくれて役に立つこともシマの人は語っていた。


ハブは本土から来た画学生が、シマの人に殺されて捨ててある大きなハブを皮をむいて焼いていたので、一度だけ食べさせてもらったことがある。

シマの人は食べたり焼酎漬けにする人は殆どいなかったようだ。

ハブは見つけたら殺すのが原則だったが、神の遣いとしての信仰の対象にもなっていた。

安全のためにやむなく殺すけれど、あえて食料にはしなかったのだと思う。

本土ではマムシが焼酎に漬けられて薬用酒になった。

祖父が捕まえてきて生きたままのマムシを、焼酎の入った一升瓶に入れていたのを見たことがある。

山間部の人は皮をむいて干して食料にもしたと聞いたこともある。


ところが、私が今住んでいる村の人は、嫌がったり恐がったりする人が多い。

山から大雨になるとマムシが流れてきて、道路でひかれていると近く棲んでいることを非常に恐がる。

また、村の草刈り作業で遭遇したら、すぐに草刈り機で退治される。

確かにマムシに噛まれて入院した人もいて危険ではあるが、ネズミやモグラを捕ってくれたりして役にも立っている。

何よりも、ヘビ自体は村にいるコウノトリの大切な食料となっているのだ。

昔はしょっちゅう見かけたヘビもあまり見かけなくなった。

以前は、庭はもちろんのこと、二階のベランダにもいたことがある。

隣の竹藪が無くなった影響が大きいが、家の周りの田畑で餌となる小動物や蛙などが減ってしまったからだろう。

ヘビになじみが無くなったこともあって、近所の小学生が毒を持つヤマカガシをペットにしているのを知って驚いた。

ヘビはむやみに恐がる必要は無いが、用心するに越したことは無い。

ヘビは食う立場でもあり、食われる立場でもあるという大切な食物連鎖の真ん中にある。

そして、あらゆる所に現れ生命力が強いから、昔からヘビを信仰の対象としてきたように思う。

ヘビを毛嫌いする人が最近は多いが、共存すべき大切な生き物であることも確かだと思う。



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