私は中学受験をして私学に中学高校と通った。
以前は、「おぼっちゃま だったのね」と、同僚の女性から嫌みを言われたりしていた。
私は開き直って、「そうやで おぼっちゃん やったんやで」と嘯いていた。
しかし、現実は赤穂市から特別に奨学金を借りて通っていた。
この奨学金は貧しくても勉強を頑張る生徒のためのもので、母親から民生委員の人が口添えしてくれたと聞いていた。
奨学金の返済は親がその後に払ってくれたが、詳しくは聞いてなかった。
自分自身は、大学、大学院と奨学金をもらっていたが、教員になって免除されていたので、親の苦労には無頓着だった。
なぜ、そこまでして授業料の高い私学へ行ったかというと、自分自身は良い大学へ行くためという意識はあまりなかった。
自身の子どもを私学に行かせていた担任の先生の強い勧めで、特に母親がその気になったのだが、私は最初はあまり乗る気でなかった。
ただ、一匹狼的なゴンタクレ(ガキ大将)であった当時の私は、となりの町の番長グループに絡まれて、同じ歳のガキ大将とタイマン張って殴っていた。
私は殴り合いの喧嘩は殆どしなかったが、剣道を習っていたので打ち込む術に長けていた。
そのガキ大将とは中学校から同じ校区で一緒になるので、面倒なことになることで気が重かった。
後に小学校の同級生(剣道少年団でのライバルのガキ大将)にそのガキ大将のことを聞いたら、彼はその男と中学校では喧嘩を続けていたという。
当時はほんとの「おぼっちゃま」を除いて、そういう喧嘩による番長支配が公立中学や一部の高校では当たり前の時代が続いていた。
私の父親からも、自分の喧嘩の話は聞かされており、「負けて泣いて帰ってくるな」とよく言われていた。
そういう、番長支配の世界を脱出できるのが私立中学だったので、担任の先生は勉強はできたがゴンタクレである私の将来を考えて強く勧めてくれたように思う。
家内は私とは違って、女子校の私立中学に行っても大した大学に行けそうになかったので、受験しなかったと言っている。
普通の女子は番長支配の関係はなくて、むしろいかに勉強で男子よりも有利に立つかを考えていたようで、公立の中学高校では勉強に励んで良い成績だった。
そういう家内も一流大学を目指しながら、3流大学に甘んじたので私と結果は同じだった。
当然ながら、私立中学へ入ってからは、良い大学に入らねば恥ずかしいとは思っていた。
ただ、大学がどういうところで、大学を出てどういう職業に就くかを漠然としか考えていなかった。
とにかく、私は入って恥ずかしくない大学を目指す程度で、ちゃんと将来を考えて医学部や東大京大を目指した同級生とは大違いだった。
中学受験では、同じように受験した同級生への対抗心や落ちたら格好悪いと必死に勉強し、合格できたこと自体は嬉しかった。
何せ、当時の公立中学校は丸刈り強制であったのがしなくて良いし、制服もネクタイに背広で格好良かった。
赤穂にあっては、私が育った柄の悪いと言われた町とは、距離を置けることで卑屈にならずに済んだ。
受験勉強の延長で中学校2年生くらいまでは何とか上位の成績でいられた。
しかし、当然ながらちゃんとした大学進学の目的のない状態では勉強に熱が入らなくなっていった。
結果としては、ロックバンド活動や男女関係にのめり込んで勉強が手につかず、教師からは不良グループとして嫌われる仲間の一員になった。
さすがに体裁悪くて直前には焦って大学受験をがんばったが、一浪しても3流大学しか入れなかった。
その程度の大学なら、何も高い授業料を払ってまで、私学に行かせる必要がなかったというようなことを父親には言われた。
母親は歌手になりたかった方なので、私のバンド活動を容認していたのだが、それが悪いと父親からずっと責められていた。
確かに結果からすればそうなのだが、今となれば私学に行って良かったと思っている。
何せ番長支配の世界から抜け出せたことは助かった。
実は、小学校の頃は女子からさえ恐れられるほどの悪ガキだったが、軟派な不良程度に修まることができた。
そのおかげで、公立中学校・高校出身の生徒よりも歌に恋愛に自由を謳歌できた。
そこらへんが、中学高校と勉強での競争にさらされて、恋愛に無縁だった家内とは大きく違っていた。
こんな二人が結婚したのも、見合いという仕組みがまだしっかりと残っていたからで、常日頃、「普通ならふたりは恋愛結婚はありえなかったね」と私は言っている。
ただ、3流大学まではその延長上で何とかなったが、権威による試練にさらされた公立の大学院でしくじった原因はこの自由気ままな姿勢からだったのだろう。
一方、教師になってからは役人型教員と肌が合わず苦労もしたが、番長支配が残っていた学校以外では生徒とはうまくやれたと思う。
現在は東大京大の合格者ランキングでは低迷している母校だが、自分にとってはありがたい学校だった。
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